好きと嫌いは紙一重なのか？6【跡部景吾】 (ページ45)

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274話ページ45

同じ場所にいること30分は経っただろうか。何もしなくなると体感時間は長く感じるので実際はもっと短いだろう。人に訊けばいいんじゃね？と思いたち、訊こうとするも全員無視。原因は私の影の薄さにより気づかれていなかったり、声には気づいてもどこにいるか分からないというやつだ。

1人で帰られるのはこの人混みがなくなる…つまりクリスマスが終わる。寝てしまったら確実に危険である。影の薄さで今のところ何もないが、結構やばい。

看板とかで道を探せないかなと思ったけど全くないという悲劇。ここまで運が悪いことがあるだろうか。

「あーもう、どうすればいいんだよ！…とほほほ…」

やけになって叫ぶ。あまり声も出ていないし、周りが話し声やイベントなどで煩いし、影も薄いので注目すらされていないけど。何もしていないと余計に寒く感じる。夜中になってさらに冷え込むとなると…あ、流石に風邪引きそう。

「あら、どうされましたの？」

「って、九条様…！？」

な、何故こんなところに九条さんが…？意外にもこういうところに来るのかね…？

「パーティーではないんですから普通でいいですわ。私もプライベートですし、少し気を抜きましょうか」

「あ、では九条さん。何故こんなところに…？」

「私もこういうところは好きよ。世間を知るにはなかなかいい機会。一応遠くにガードマンとかはいるけど…Aさんの連れは？」

「実は、はぐれちゃいまして…」

「それは大変ですね…お相手は景吾様？」

「いえ。その…」

「隠さなくても分かるよ。困ったわね…Aさん、携帯は？」

「実は家に…」

見抜かれていたとは…まあ、九条さんみたいな聡明な方なら私が必死に隠そうとしてもパーティーであれだったらね…

「仕方ないわね…もしもし、探してほしい方がいらっしゃるのですけど」

いやあ…プライベートだからって気軽に、軽い口調で話してるつもりみたいだけど充分丁寧な口調だよ…朱音とは大違い。金持ち同士でもこうも変わるのか…

「少ししたら見つかると思う。それまでお話しでもしましょうか」

「ありがとうございます。それじゃあ、そうしましょう」

物凄い心強い人がいてくれてよかった…