雪は白いが君は死ね【時透無一郎】

14話 喜怒哀楽 ページ16

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ねぇ、と責め立てるような瞳で私を見つめてくる。

……不思議だ。不思議な瞳……私と対話しているはずなのに、別の何かを写している。


『もしかして……』

「？」


『貴方も記憶を失っているの？』と聞きかけてやめた。私だったらそんなこと他人に言われたくない。
それに『貴方「も」』だなんて、彼は私とは違う。
記憶がないということだけで誰かと一括りにするのは間違ってる。

彼のような人はきっと助ける命の優先順位もしっかり決めていて、冷静に任務を遂行できるんだ。ああ、羨ましい。妬ましい。私みたいな生半可なヤツを許せなくて当然だ。


柱になればその分だけ責任が重くなる。
全鬼殺隊士の憧れや尊敬の的である柱には迂闊な行動は許されない。

だから私は、柱にはなれない。
鬼殺隊のために命も懸けられない。
だったら辞めてしまえと言われても、首を縦に振れない。弱いから。あまりにも弱すぎるから。

記憶がないのだと嘆いておきながら悪夢の元凶に立ち向かう勇気もない。
言葉が行動に伴わない弱者、それが私なのだ。
わかっている。


『……本当は、わかっているのです。全て』

「？…何を……？」

『失礼致します』


彼の言葉は本当に他意がなくて、なんの含みも混じり気もない。気配でわかる。だからこそよけい自分が情けなくて、たくさんのよくわからない感情が入り交じった顔を見られたくないあまり部屋を駆け出してしまった。

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