10話 隠 ページ12
______数時間前________
「A」
産屋敷殿は、初めてお会いした時から私の名前を大層気に入っていた。何でかはわからない、きっと忘れてしまった記憶のどこかにあるのだろうが、記憶をとりもどしたいとは思えない。
『はい、何でしょうか』
「出会ってからしばらく経ったけども、相変わらず君は美しいね」
『……ありがとうございます』
普通、人に……いや、お館様ほどの方に容姿を褒められたら嬉しいものなのだろう。だけど何故か私はそんな感情が一切湧いてこない。
最近一番嬉しいと思ったことは何?と聞かれても、私はきっと何も答えられない。
例えばかつての竈門少年達のように、自分とともに任務に向かった人間が負傷して、柱として戦い続けることが出来なくなってしまったら、きっと悲しいだろう、自分を責めるだろう。
だけど私がその立場だったら、竈門少年達と同じような思いを抱けるだろうか?
答えはわかりきってしまっている。私には人の心がないのだ、竈門少年のような温かい人の心がない。
________少年に初めて出会ったのは、半年に1度の柱合会議、その日は柱が一時的に不在だったため私も任務が増えたり見回りの範囲が拡大したりと大変だったのだけど、1度報告のため産屋敷殿の邸宅に戻ったとき、隠がボロボロの少年を地べたにおろしているのを見て思わず駆け寄った。
『それは何を…しているの?』
「っ!」
隠は少し驚いた素振りをしてから私の姿を視認すると、ほっとしたように胸をなでおろした。
「ああ、紲条様でしたか。こいつは那田蜘蛛山での任務先で鬼を庇った馬鹿野郎ですよ。一応隊内ではご法度なんで、これから柱合会議で裁判にかけられるのだそうです」
『そう…鬼を……』
鬼殺隊士が鬼を庇ったなんて話は初めて聞いた……こんなにボロボロになるまでどうしてそんなことをしたんだろう。
「…きっと家族か何かだったんでしょう」
『家族…』
「う…………」
「お、起きましたかね?……ってなんだ、寝言か。
おいお前!柱たちが来る前には目ェ覚ませよ!」
「……ず……ねず……こ、逃げろ……!」
ねずこ、庇った鬼の名前だろうか。
呼び方からしてして妹だろうか、でも…たとえ家族だろうが鬼を擁護するなんて愚かな行為だと思う。
『……』
……もし、もし仮に大切な人が鬼になってしまったら、私もこの少年と同じことをするのかな、出来るのかな。
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ほしいも(*^^*)(プロフ) - 設定めっちゃ自分の好みでした!(笑)更新少しずつでいいので頑張ってください〜!😁 (12月13日 16時) (レス) @page40 id: 88768a4726 (このIDを非表示/違反報告)
向汰(プロフ) - 空桜さん» そう言っていただけて嬉しいです!それに、私以外にも頑張っている方がいらっしゃるのだと思うと少し肩の力が抜ける気がします(´˘`*) 試験頑張ってください。応援しています (2019年9月23日 1時) (レス) id: 1112aaa288 (このIDを非表示/違反報告)
空桜(プロフ) - 待ってますね!私も就職試験あります。お互い頑張りましょう! (2019年9月23日 1時) (レス) id: e5333279ca (このIDを非表示/違反報告)
向汰(プロフ) - 何卒さん» ありがとうございます〜〜!気長にお待ちください(´˘`*) (2019年9月22日 21時) (レス) id: 1112aaa288 (このIDを非表示/違反報告)
何卒 - めっちゃ気になるところで終わってしまってウズウズしてます。笑 続き楽しみにしています! (2019年9月21日 1時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:向汰 | 作成日時:2019年8月25日 1時