【曇天に笑う 男主】空っぽ青年には何も『無』い 第二部

37話 ページ6

「風魔の生き残りだと思って連れてきたんだろう？」
「えっ！？あ、いや…」

慌てて違う言い訳を見つけようとするが無駄だった。

見透かしたようにこちらを覗き見る白子さんを見たら下手な言い訳など無意味。

こくん、と静かに頷いて俯く。

どくんどくんといつもより心臓の音がよく聞こえる。

あぁ、何を言われるんだろう。

余計なお世話だったとか、なんで連れてきたのとかそういうものか。

ぎゅうっと目をきつく閉じると不意をつかれた。

「ありがとう」
「え、あ、いや…」

予想外の言葉に戸惑って白子さんへと向き直ると俺は思わず目を見開いた。

白子さんが笑っていた。

いつもの困った顔の笑い方じゃなくてふわりと優しい笑みだった。

「白子さん…」
「ん？どうかした？」
「…いえ、なんでも…」
「そう？」

どうやら無自覚のようだった。

新鮮過ぎてなんといえばいいか困る。

そんなことを思っているうちに元の顔に戻ってしまい少し惜しいことをしたと思う。

もう少し見ていたかったなぁ、なんて。









……いかん、俺！！

今と前じゃ状況が違う！！

ちゃんと己を律しなければ。

適度に距離を離さねば。

俺が死んでも大丈夫なように…ってね。

まぁ、自惚れだとは思うけど。

そんなことしなくたって、死んだら死んだで、はい、おしまい。って感じだよ。

家族ですら……そう、だった。

いや、あれらは家族というべきでもないか。

だから、数年そこらの居候なんて。

たかが知れてるよなぁ。

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