72話 ページ45
「A。600年前の事覚えてるか」
「は…?」
なに、いきなり…。
「俺はあの時お前に助けてもらった。でもお前は大蛇に食われた…あの時から、いやずっと前からお前は、死ぬつもりだったのか…?」
「そう、だけど」
比良裏が大きく息を吐いた。
それから自分の顔を手で覆う。
びくりと過剰に反応した俺の体が震える。
次に俺はなんと言われるだろうか。
無意識に構えてしまう。
そんな自分が嫌になる。
「俺はさ、生きて欲しかった」
「は…?」
予想しない言葉に思わず間抜けな声が出る。
そんな俺に畳み掛けるように比良裏が言葉を重ねた。
「お前に生きて欲しかった!!あの時も!今も!!なんで死のうとするんだよ!!俺に生きる希望を教えてくれたお前がそんな無責任なことしていいと思ってんのか!?ふざけんな!」
「お、俺は……」
「生きてくれ!!お前に生きて欲しい!!」
「ーーーーっ!!」
息を呑む。
俺、生きててもいいの?
もし、俺がこう問いかけたら。
問いかけられた俺の大好きな人達はどう答えるんだろう。
そんなの分かりきっていた。
だから、ずっと言えなかった。
でも。
「おれ、俺は…生きて、いきてもい…いの…?」
嗚咽混じりにそう問いかける。
「当たり前だろうが!!」
比良裏は、キラキラしてて、眩しくて目が痛くなる。
俺の欲しい言葉をこんなにもあっさりと言ってくれる。
ずっとずっと欲しくてたまらなかった。
ぎゅうっと比良裏の服を握り締めて年がいもなく声を上げて泣いてしまう。
生きたい。
本当は死にたくない。
そんなの知ってた。
誰よりも俺がわかってた。
あぁ、嬉しいなぁ。嬉しいなぁ。
「比良裏…」
「なんだよ」
「ありがとう、それから………ごめん、な」
「A?」
でも、俺の待ってるそれは、変わることはない。
頭から足の指先まで激痛が走った。
ごほっと一度咳き込むと何かが口の中から垂れる。
口内は鉛の味しかしない。
「っ!?A!?」
「ごめん、ごめん。本当にありがとう」
最後に欲しいものをくれてありがとう。
比良裏の焦った声がだんだんと遠のいていく。
そうして俺は静かに思考を停止した。
大蛇様の体内で死んだ俺は、いわば大蛇様の一部と言っても過言ではない。
予想はしていた。
もしかしたら大蛇様が死んだら俺も…と。
わかっていて死のうとしたのは欲しいものがあったから。
足掻いたかいはあった。
だから、ありがとう、そしてごめん。
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隣の住人Eさん(プロフ) - 紅帆さん» コメントありがとうございます面白い、素敵な作品と言ってくれて本当に嬉しいです(*´∀`*)番外編、頑張って更新しますので是非見てください!長らくお付き合いありがとうございました!! (2015年3月3日 6時) (レス) id: 1f53714272 (このIDを非表示/違反報告)
紅帆 - とても面白かったです(≧▽≦)素敵な作品をありがとうございました!番外編も楽しみにしてます。 (2015年3月3日 2時) (レス) id: 01156b7467 (このIDを非表示/違反報告)
隣の住人Eさん(プロフ) - 浅兎さん» コメントありがとうございます!!完結することが出来て、わたし自身も嬉しい限りです!!体には十分気をつけますね。心配して下さって本当にありがとうございます!!番外編に力を注ぎますのでどうぞ見てください!長らくお付き合いありがとうございました!! (2015年3月2日 23時) (レス) id: 1f53714272 (このIDを非表示/違反報告)
浅兎(プロフ) - 完結おめでとうございます!!最後まで本当に面白かったです!番外編も楽しみにしてます これからも身体に気をつけ頑張って下さい お疲れ様でした!! (2015年3月2日 23時) (レス) id: d77a3c3a37 (このIDを非表示/違反報告)
隣の住人Eさん(プロフ) - 吹雪奏来さん» コメントありがとうございます!楽しんで読んでくれたら本当に嬉しい限りです!!早速番外編を今しがた更新しましたのでどうぞ見てってください!!長らくお付き合いありがとうございました! (2015年3月2日 23時) (レス) id: 1f53714272 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:隣の住人Eさん | 作成日時:2015年1月6日 12時