【曇天に笑う 男主】空っぽ青年には何も『無』い 第二部

57話 ページ28

「私は忍、使われる道具、人ではない。けれど少し…ほんの少しでも許されるなら。どうか、この錦をお側にーーーーー」

不意に、錦ちゃんがこちらに寄って膝を着いたので反射的に八房に手を掛ける。

しかし、それは大蛇様に制された。

じっと錦ちゃんを見てからふいっと視線を俺に向ける。

「大蛇さ…うわ！？」

それからまた担がれた。

おーう。

抵抗できるはずなくだらーんと体重をかけているとそのままスタスタと歩いていく。

本当に何したいのかな？

その後を錦ちゃんがついてくるのがわかる。

が、小太郎さんはそこから動かない。

様子見ってこと？

それとも、俺の判断で錦ちゃん切り捨てて言い訳？

仮面かぶってるら余計わかんねぇ。

諦めよ。

「A様」
「ん？何？錦ちゃん」
「A様も空丸様を？」
「いや、大蛇様を探してたんだ」

線引きをする。

あくまで、錦ちゃんが空くんだろうと俺が求めているのは大蛇様だということ。

それをハッキリさせないと。

錦ちゃんの表情が一瞬崩れるが、すぐに元の顔に戻った。

あー、この子違うなぁ。

わかった、そっち側だねぇ。

変な真似したら斬るかな。

後少しで俺の目的が達成されるから邪魔されると困るんだよね。

大蛇様に、担がれとある場所で下ろされた。

特に何もない岩があるところだが、あ。

「曇家の刀？」

確かこれ空くんがもってたやつ。

そういや、大蛇様はこれさしてないな。

なんか気に入らなかったのか？

そう思いながら触れようとしてばちっと電流が走ったような痛みを感じた。

「え、な、なに！？」

地味に痛かったんですが！？

手をさすっていると大蛇様もそれに触ろうとして刀に弾かれた。

え。

何、それどういうこと？

俺も同じこと起こってたよね？

ちょっとパニックになってると、錦ちゃんがその刀をそっと手に取る。

「その刀は曇家代々の護り刀だそうです」

あ、うん。知ってる。

「三百年前に大蛇に取り込まれ刀身に術を宿した…もしかして大蛇自身にとってその術が致命的だったりするのでしょうか。





この刀があれば大蛇と器が切り離せると聞きました」




ーーーーーえ？

耳を疑って大蛇様に、切りつけてきた錦ちゃんに反応が遅れた。

大蛇様がすぐに反撃に出るが錦ちゃんが刀を持って走り去っていく。

「大蛇様と器が切り離せる…？」

呆然とそう呟く。

なら、空くんと大蛇様を切り離す事が出来るのか。

空くんが。

空くんが、帰ってくる…？

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