願わくば…【進撃の巨人】2

・ ページ24

･










視界がぼやける。



私は涙を流していた。



繋がれていない右手で拭うも、どんどん溢れてくる。



「生きてて…良かった…」




『起きてくれて、良かった。アニ。』




「っ！」






どうして泣いているの？なんて優しい声を掛けながら私の涙を拭うA。


戦士の使命よりなにより、Aが生きていることが嬉しかった。


そして、人を沢山殺したのにも関わらず、前と変わらずに接してくれるのが、嬉しくて、痛かった。



『おはよう、アニ。』



「…おはよう。…A」



ここは何処なのか、どうして生きているのか、私はどうなったのか、聞きたいことは山ほどあるのに…。


でもそんな事より、言わないといけないと思った。



今までずっと、言わなかったことを後悔したから。




だから、勢いに任せて抱き着いた。





「A…」



『なぁに？アニ』



「アンタ、私の事、好きだって…ずっと…」



『うん。俺はアニの事大好きだよ。会った時から。今もずっと。』



言え。恥ずかしがるな。



抱き締めているこの体制なら顔も見えない。




Aはこんなにもずっとずっと出会ってから、好意を口にして伝えてくれているんだから。



次またいつ死ぬか分からないのだから。




「わ、私も…アンタが、好き…。
Aが、好き。」



震える声を、どうにか繋ぎ止め、最後まで言い切った。


途切れ途切れだけど、今まで言おうとしてやめてを繰り返した言葉を口にした。



Aは喜んでくれるのかな、なんて柄にも無いこと考えたけど……

Aは何も言わない。


普段の沈黙は心地いいけれど、今はすごく怖い。

顔が見えないのが怖い。



「な、にか…言わないの、？」



今まで受け流していたくせに今更になって言ったから怒っているの？


それとも、危ない所を助けてくれたからその場の雰囲気だけで言ったとでも思っているの…？




なにか、なにか言ってよ…。








･

安寧の地→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す