Sette ページ7
「今週は来ないのかな…」
雨が滴る窓を見つめながら呟く。
彼は、あれから週1回ほど、この島を訪れるようになっていた。お陰ですっかりアイスランド語を習得してしまった。
そして、彼を心待ちにしている自分がいた。
「まるで恋する乙女だな。たどえ相手が一国の坊ぢゃんでも、私は止めねえげど?」
「うるさいなぁ!余計なお世話だっぺよ!」
くすくす、と上司も部下も笑う。恥ずかしくなってその場を離れようとすると、ドアを叩く音が聞こえた。
「自分、ちょっと見て来ますね!もしかしたらAさんの王子様かもしんねぇし…?」
にやけながら部下はドアの方に歩いていった。
直後。
何かが崩れる音と、血の匂い。
何人もの足音と、誰かの叫ぶ声。
聞き覚えのある、祖国の声だ。
「この諸島は、俺らデンマーク及びノルウェー王国が包囲したっぺ!大人しく武器をがっぽって降伏しろ!逆らうやづは皆殺しだっぺ!」
「祖国…!何故ごんな事をっ…」
私の声に反応したのか、彼は振り向く。そして、こう言い放ったのだ。
「おめには関係ねえ。女風情が政治に口出すんじゃねえ。女…でもねえが、この魔女が。おい、おめら、こいづを折檻しとげ。」
私は絶望した。長年慕ってきた祖国に見放されたのだ。私は無我夢中で叫んだ。
「うるせえ!おめなんか祖国でも何でもねえ!ただの獣だ!血に飢えだ獣だ!敗戦した負げ顔を拝みだいもんだな!!」
大男2人に荒々しく腕を引かれ、牢屋に送られる。私はその間も、言葉にならない事を叫び続け、遂に鳩尾を殴られ、気を失った。
あの少年は翌日私の家を訪れたそうだが、祖国に追い返されたらしい。それから二度と彼と会うことは無かった。
私の50年に渡る折檻が終了したと同時に、両親が亡くなっていた事が発覚。皺だらけになった兄を助けるために仕事を手伝うが、当然ながら彼からも気味悪がられる。何せ折檻された時と容姿は全く変わっていない。
大寒波で失業し、絶望に浸っていた私に、手を差し伸べてくれたのは、あの太陽みたいな人だった。
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藤子(プロフ) - あんこさん» 初めまして!コメントめちゃめちゃ嬉しいです!!あんこさんをときめかせる事が出来たようで何よりです〜!! (2019年3月26日 17時) (レス) id: 667f2e653e (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 藤子様、初めまして。本当に素敵な作品で、悶絶しながら読ませて頂きました!ロマの台詞にきゅんきゅんさせられてばかりでした。幸せな時間を過ごさせて頂きまして、誠にありがとうございます。不躾ながら完結から随分と経っているのにコメント失礼致しました。 (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6e1ddb073f (このIDを非表示/違反報告)
藤子(プロフ) - パン粉さん» わぁ!ありがとうございます!!お気に召していただけたようで何よりです! (2018年11月29日 22時) (レス) id: 771e5159cf (このIDを非表示/違反報告)
パン粉(プロフ) - とても好きです……。 (2018年10月13日 14時) (レス) id: c18102f006 (このIDを非表示/違反報告)
ツナ缶アイス - 藤子さん» はい、福島の人なんです!wwやっぱりヘタリアについて語るのは楽しいですね!8時間くらい語れそうです!ww (2018年8月18日 19時) (レス) id: ec47fd7e2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤子 | 作成日時:2018年8月3日 23時