Quattro ページ4
あれは何百年前の話だろうか。
私が親分に拾われる前だから、少なくとも500年以上は前の話だ。
以前の私の職業は、世界を股にかける商い。
と言っても実際は長男が仕事を継ぎ、私は雑用係だった。今とやっている事は大して変わらない。
その日は、イギリスに農作物を輸出する予定になっていたため、現地へ向かった。
只、帰港の際、悪天候の為に、当日は現地で滞在する事になった。確か、近くのパブの2階に泊まらせてもらった。
そこが、私とイギリスが出会った場所。
当時彼は相当酔っており、ほぼ裸の状態で星の付いたステッキを振り回していた。
祖国もこの日は潰れていた。祖国では味わえないエールに現を抜かした所為だ、きっと。
殿方の空いたグラスを、往復しながら厨房に返したり、彼らに毛布を掛けたりしていると、彼に声を掛けられた。
「おまぇ、見にゃい顔らな？最近ころ仕事に就いたのか？」
英国紳士たるものが、淑女にこんな態度か。
否、酔って私が男に見えているのか。
「えぇ。つい2年程前。両親が事故で亡くなって、家業を継ぐ兄を手伝う形で、ですがね。
仕事なんて雑用がほとんどですが、私にはこれが天職かな、なんて思ってます。」
ふぅん、と気の無い返事をして彼は黙った。
寝てしまったのだろうか、と思い毛布を彼に掛けようとしたその瞬間、
「ほぁた！」
彼の言葉と同時に目の前が白い煙で覆われる。息が苦しくなって思わずむせ返る。
「な、何したん、で、すか！」
彼は、へへへー、とだらしなく笑った。
そしてこう言ってまた寝てしまった。
「俺が1ヶ月寝込むかぁりに、おまぇの寿命の進行を、俺らと一緒にしれみたぞぉ〜」
彼の行動の理由は未だ分からない。
だが、言えることは、彼の魔法が成功し、あの時の容姿のまま、私が数百年生きているという事実だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 96人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藤子(プロフ) - あんこさん» 初めまして！コメントめちゃめちゃ嬉しいです！！あんこさんをときめかせる事が出来たようで何よりです〜！！ (2019年3月26日 17時) (
レス) id: 667f2e653e (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 藤子様、初めまして。本当に素敵な作品で、悶絶しながら読ませて頂きました！ロマの台詞にきゅんきゅんさせられてばかりでした。幸せな時間を過ごさせて頂きまして、誠にありがとうございます。不躾ながら完結から随分と経っているのにコメント失礼致しました。 (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6e1ddb073f (このIDを非表示/違反報告)
藤子(プロフ) - パン粉さん» わぁ！ありがとうございます！！お気に召していただけたようで何よりです！ (2018年11月29日 22時) (レス) id: 771e5159cf (このIDを非表示/違反報告)
パン粉(プロフ) - とても好きです……。 (2018年10月13日 14時) (レス) id: c18102f006 (このIDを非表示/違反報告)
ツナ缶アイス - 藤子さん» はい、福島の人なんです！wwやっぱりヘタリアについて語るのは楽しいですね！８時間くらい語れそうです！ww (2018年8月18日 19時) (レス) id: ec47fd7e2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藤子 | 作成日時：2018年8月3日 23時
