Ventiquattro ページ24
時は過ぎ、私達は屋敷に帰ってきた。とある家政婦さんに依頼をしていた為、屋敷の中は出掛けた時の綺麗さを保っている。
「俺ん家のベテランハウスキーパー、中々使えるだろ?」
太い眉毛を上げて、彼は自慢気に話す。
「えぇ。これでもし、私が居なくなっても安心ですね。」
本当に彼女へ屋敷を任せてしまおうか。期限は一週間。後継を探す時間はあまり無いのだ。
冗談で言ったつもりだったが、ロマーノ坊っちゃまが本気で捉えてしまった。
「なっ…A!俺に悪い所があるなら直すからよ!頼む!頼むから化け物と入れ替わらないでくれ!」
そう、彼女は英国の妖精の一人。イギリスに頼んで連れてきてもらったのだ。観光もオフシーズンという事で、二人とも承諾してくれた。
本気で嫌がる彼がなんとも愛おしかった。思わず笑みが零れる。
「大丈夫ですよ、冗談ですから。」
軽く彼の頭を撫でると、彼は安心したように悪態を吐き始めた。
「やけど、ロマーノも十分一人前になった事やし、そろそろ召使いも要らへんのちゃう?」
「うっわ、スペイン、それ自分で言うのか?」
独立されんのは辛いぞ〜、と苦い顔で話すイギリス。自身に経験があるからだろう。
その時は慰めてやぁ、と軽く笑う親分。あんなにいがみ合っていた二人が、こうして戯れ合っているのが信じられない。
ロマーノは少し考えてからこうまくし立てた。
「独立なんか面倒くせぇ。第一、Aと、"ずっと一緒に居る"って約束したんだこんちくしょー。」
語尾は消え入りそうに小さくなっていたが、それより彼がその約束を覚えていてくれた事が何より嬉しかった。
《なぁ、Aっ、お前は俺とずぅっと一緒だからな!約束だぞ!》
家が恋しくなったのか、祖父が恋しくなったのか、ある日突然小指を差し出された。
《えぇ、私はいつまでも坊っちゃまと一緒ですよ。》
優しく小指を切ると、彼は安心したのか我儘を言い始めた。
《お腹空いたぞ、コノヤロー!》
《はいはい。》
体温の高い幼児を抱き上げ、シエスタを勧める。彼は眠たそうに私の胸で瞼を擦りながら、連れてけコノヤロー、と微睡む。
こんな毎日が、永遠に続くと思っていた。今日、この日までは。
「えぇ、覚えていますよ。私はいつでも、坊っちゃまと一緒です。」
少しぎこちない笑顔を彼に向けた。
心が苦しくなった。
なぜなら、これが、彼に初めて吐いた嘘だったからだ。
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藤子(プロフ) - あんこさん» 初めまして!コメントめちゃめちゃ嬉しいです!!あんこさんをときめかせる事が出来たようで何よりです〜!! (2019年3月26日 17時) (レス) id: 667f2e653e (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 藤子様、初めまして。本当に素敵な作品で、悶絶しながら読ませて頂きました!ロマの台詞にきゅんきゅんさせられてばかりでした。幸せな時間を過ごさせて頂きまして、誠にありがとうございます。不躾ながら完結から随分と経っているのにコメント失礼致しました。 (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6e1ddb073f (このIDを非表示/違反報告)
藤子(プロフ) - パン粉さん» わぁ!ありがとうございます!!お気に召していただけたようで何よりです! (2018年11月29日 22時) (レス) id: 771e5159cf (このIDを非表示/違反報告)
パン粉(プロフ) - とても好きです……。 (2018年10月13日 14時) (レス) id: c18102f006 (このIDを非表示/違反報告)
ツナ缶アイス - 藤子さん» はい、福島の人なんです!wwやっぱりヘタリアについて語るのは楽しいですね!8時間くらい語れそうです!ww (2018年8月18日 19時) (レス) id: ec47fd7e2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤子 | 作成日時:2018年8月3日 23時