Diciotto ページ18
「…っていうか、お前一人で来たのか?」
「貴方と違って連れがいます。」
このような皮肉な言い方しか出来ない自分にも嫌気が差す。彼は口角だけ上げて返答した。
「無用な心配だったな。まぁ、その連れとやらもいねぇけど。」
そう、私は彼らを置いてきてしまった。自分勝手な行動をして。
私が黙ったままでいると、彼は気を遣ったのか、少し焦りながら、
「あっ、まぁ、気を落とすなよ?見栄張って嘘吐いてんのかもしんねーけど、いつか友達くらいできっから!」
「はぁ?違うし!ちゃんと親…スペインさんとロマーノ坊っ…ロマーノと来たんだから!」
彼は、じゃあどこに居るんだよ、と言いたげな顔をする。それは私も聞きたい。
背後からこちらに近づく足音が聞こえる。少し高めのヒールの音だ。しかし、私の記憶が正しければ、二人はヒールを履いていない筈だ。
…誰だ?
少し緊張しながら後ろを振り返る。
「…Aっ…。」
500年前と何も変わらない、白銀に輝く髪を持つ、アメジストの瞳が私を見つめていた。歩き回っていた所為か、頬が赤く染まっている。
不思議と先程のような恐怖は無かった。イギリスは驚いたように彼と彼女を交互に見ている。
「あ、アイス、ラン、ド…?」
不安な表情で彼の名前を呼ぶ唇が震えた。長年逢いたくて堪らなかった、しかし、いざ顔を合わせたら何の言葉も出てこない。もどかしい感情が彼女の中で渦巻く。
「…元気だった?辛い事はあった?…今まで何して過ごしてたの?僕は…
僕は君に…すごく逢いたかった。」
そう言い終えたと同時に、身体が温かい彼に包まれた。彼は以前より大きく、逞しくなった。もう、私が全て包み込まれてしまう程に。
「わ、私、も…アイスランドに会って、お話、したかったよっ…。」
瞳から自然と雫が溢れる。腕は彼の背中に回り、しっかりと彼の身体を受け止めた。
それから数秒もしない内に、後から私を探していた四人もやって来た。
私は、また逃げ出す事は無かった。正しく言えば、逃げ出す事が出来ない事に加え、逃げ出したいとも思わなかった。
ずっと時が止まればいい。
彼の胸の中でそんなことを考えていた。
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藤子(プロフ) - あんこさん» 初めまして!コメントめちゃめちゃ嬉しいです!!あんこさんをときめかせる事が出来たようで何よりです〜!! (2019年3月26日 17時) (レス) id: 667f2e653e (このIDを非表示/違反報告)
あんこ(プロフ) - 藤子様、初めまして。本当に素敵な作品で、悶絶しながら読ませて頂きました!ロマの台詞にきゅんきゅんさせられてばかりでした。幸せな時間を過ごさせて頂きまして、誠にありがとうございます。不躾ながら完結から随分と経っているのにコメント失礼致しました。 (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6e1ddb073f (このIDを非表示/違反報告)
藤子(プロフ) - パン粉さん» わぁ!ありがとうございます!!お気に召していただけたようで何よりです! (2018年11月29日 22時) (レス) id: 771e5159cf (このIDを非表示/違反報告)
パン粉(プロフ) - とても好きです……。 (2018年10月13日 14時) (レス) id: c18102f006 (このIDを非表示/違反報告)
ツナ缶アイス - 藤子さん» はい、福島の人なんです!wwやっぱりヘタリアについて語るのは楽しいですね!8時間くらい語れそうです!ww (2018年8月18日 19時) (レス) id: ec47fd7e2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藤子 | 作成日時:2018年8月3日 23時