Ms.Triple Three (ページ9)

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9.初ヒット(1) ページ9

『おはよーございまーす。』

誰もいないロッカールームに自分の声が響き渡る。

『さーて、素振り素振り…』

高校の時からずっと同じ形のバットを持ち、全身鏡のある部屋に行き、素振りを始める。

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素振りを初めてどのくらい経っただろうか。未だに鏡の前でバットを振り続けている。

『何かな〜…上手くいかないわ…』

色々試行錯誤してみるもなかなか納得いかず、とうとうバットを放り投げる。
開幕戦から全く打てず、かれこれ十何打席ヒットが出てない。ネット上でも

"A選手って一軍に必要なの？全く打ててないじゃん"

"小塙、なんでドラフト5位で取れたのよ笑ハズレすぎ！"

なんて言葉を見かけるようになってきた。
自分でも頑張ろうとしているが、それこそ裏目に出てしまっている。
そんなことが重なり、最近は野球の試合に出ることが嫌になってきていた。

『…野球辞めたいな』

？？「なーに言っとんねん。新人のくせに簡単に辞めるとかいうな、ボケ。」

ふと声がして振り返ってみると、ドアの付近に寄っかかっている坂本さん。その顔は今まで見たことないくらい怒っていた。

『坂本さん、おはようございます！まあまあ！あれは冗談ですよー！』

坂本「その顔で冗談言われても、信じられんわ。ほんまに辞めたいんか？」

『…』

正直、図星だった。言うことがなくなり、お互いの間に気まずい空気が流れる。

坂本「…お前、軸足もうちょい溜めてみ。ちょっとは変わるかもしれへんよ。」

『え？』

坂本「は？何やねん。フォームで困ってるんちゃうか？」

『まあ、おおよそそんな感じです。』

坂本「やろ？まあ、参考になるか知らんけど。」

じゃあまた後で〜、と言ってロッカールームへと戻っていった。
驚いた。坂本さんがあんなふうに見ていて私にアドバイスしていただいたことに。

『….今日は何だか打てそうだな〜！』

気づいたらあれだけ嫌っていた野球も、今では早くやりたいと思っている自分がいた。
バットを拾い上げ、先程、坂本さんに言われたことを体に染み込ませるためにバットを振る。
早く試合したいなぁ…

to be continued
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