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それから二時間、咲良さんは黙って小説を読み続けた。
『……。』
松村「……つまんなかったですよね、……すみません。」
『……天才、』
松村「っ、えっ、?」
『これちょー面白い!!えっ、これ絶対に編集社送った方がいいって。まじで千晃くん、てんっさい!!』
松村「……っ、」
『ん?……ごめん、ちょっと感想が馬鹿っぽかった?ごめん、こういう素敵な物見ちゃうと語彙力なくなるんだよ……。』
松村「……こんなに褒められたの、初めてなんで……すみません、なんて、言ったらいいのか……僕も分かんなくって、」
『ふふ、千晃くんがもし小説出すってなったら、私、その小説の表紙とか描きたいな〜……。』
松村「……、馬鹿にしないんですか?」
『……なんで馬鹿にしなきゃいけないの?』
松村「……小説書いてるなんて言ったら、普通は馬鹿にされるじゃないですか。……咲良さんは、馬鹿にしないんですか?」
『……人の才能を馬鹿にする訳ないじゃん。それが普通の方がやばくない?私だって自分の絵、馬鹿にされたら腹たっちゃうもん。』
咲良さんが言っているのはごもっともだった。
……だけど、本当に嬉しかった。
『てか、この小説すっごい好き。……これ貰っていい?』
松村「っ、どうぞ。」
『あっ、勝手に他の人に見せたりしないから安心してね。……ふふ、これすっごい良いなぁ……。好きだなぁ……。』
松村「……っ、ありがとうございます。」
『こちらこそ。……一回、この小説、出版社に持って行ってみたら?絶対にこれは読んでもらうべきだよ。』
松村「いやっ、それは……。」
『……自信ない、?』
松村「……もう何個も送って、落とされてるので、」
『まぁ、無理にとは言わないけど……私は素敵だと思う。出版社に何言われようと、私はこの作品の……檜山千晃のファン一号だから。』
松村「っ、ありがとうございます。」
『ふふ、……じゃ、バイト行ってきまーす。』
松村「行ってらっしゃい。」
僕は、意外にも人の意見に左右されやすい人間みたいだ。
咲良さんが出ていってすぐ、出版社に連絡した。
憧れの作家を担当している、文芸編集部の方に。
普段自分の小説を送る時には
特に期待していなかったけど
咲良さんにあんなに面白いと言ってもらえたら
大丈夫な気がして。
……杞憂かもしれないけれど、今回こそ、いける気がして。
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花火2016(プロフ) - のさん» コメントありがとうございます!まいやんとのお話考え中ですのでしばしお待ちください!✨ (3月10日 16時) (レス) id: d050ed87d3 (このIDを非表示/違反報告)
の(プロフ) - 白石麻衣ちゃん推しとしても今回出番あったのとっても嬉しいです。2人が仲良くなっていくところとかまた見れたらいいな。 (3月9日 21時) (レス) @page8 id: 84741cfeca (このIDを非表示/違反報告)
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