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松村「……っ、……ぐす、……っ、……」
あぁ、なんて酷な事を言うんだろう。
私の事を忘れてだなんて、無理な話なのに。
あなたが思っている以上に、僕はあなたが好きなのに。
なのに、咲良さんは、僕の前にはいない。
loverの正しい表記を、教える事すらできない。
未熟な小説を読んで褒めてくれる「ファン第一号」も
「ただいま」に「おかえり」を返してくれる「同居人」も
一緒に声が枯れるまで歌ってくれる「友達」も
ずぶ濡れで僕の前に現れた「初恋泥棒」も、もういない。
あなたのいない人生が、素敵なわけがないじゃないか。
なんて、……なんて残酷な人なんだろう。
僕は、……どこで、何を間違えた?
───
松村「……っ、」
泣き疲れて、気付けば床で眠ってしまっていた。
今日の出来事が全て夢ならいいのにと周りを見渡したけど
咲良さんは、どこにも居なかった。
温もりは、先程よりも消えている気がした。
失意の中で、本を縛るビニール紐が目に入って
一瞬、首を吊ろうか悩んだ。
……だけど、生きる楽しさを知ってしまった、今。
僕に死ぬ勇気なんて、これっぽっちもなかった。
彼女は、無気力だった僕に生きる意味だけを与え
そして、幻のように消えた。
そのせいで。……彼女のせいで。
生きる意味がないのに、生きなきゃいけない気がして。
……本当に淡井咲良さんは、ずるい人だった。
松村「……っ、」
腫れた目を擦って、僕はパソコンを開いた。
僕は、生きる意味を見出さなきゃいけない。
……このまま、過去の自分に戻るなんてごめんだ。
線路に飛び込んだり、首を吊って死ぬのなんてごめんだ。
松村「…………。」
いつか、咲良さんの小説を書きたいと思っていた。
読んでくれる人は、もういない。
だけど、僕は書く事自体に意味があるような気がした。
……今は、書く事しか、できなかった。
少しずつだけど、書き進めていこうと思う。
誰に見せるつもりもない、ただの自己満足。
雨の中で出会った、彼女を綴った物語。
タイトルだけは、決まっていた。
「モノクローム・ラバー」
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花火2016(プロフ) - のさん» コメントありがとうございます!まいやんとのお話考え中ですのでしばしお待ちください!✨ (3月10日 16時) (レス) id: d050ed87d3 (このIDを非表示/違反報告)
の(プロフ) - 白石麻衣ちゃん推しとしても今回出番あったのとっても嬉しいです。2人が仲良くなっていくところとかまた見れたらいいな。 (3月9日 21時) (レス) @page8 id: 84741cfeca (このIDを非表示/違反報告)
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