・ ページ13
・
咲良さんの顔が、見れない。
類は違えど、彼女も夢を追っている類の人間で
僕と違って才能のある彼女と自分を同じにするのは
彼女に対して失礼かもしれないけれど
そういう意味では、僕たちの立場は似ている。
人に言われたくらいで夢を簡単に捨てようとしている僕を見た彼女は、僕の事を幻滅しただろうか。
……嫌いになっただろうか。
『……。』
そのまま咲良さんは立ち上がって、どこかに行った。
何をしに行ったか分からないけれど
音的には、カバンの中を漁ってるみたいだった。
『はい。』
松村「……えっ、?」
『……後ろから5ページ目、開いて。』
松村「……、見ていいんですか。」
『うん。』
渡されたスケッチブックの、後ろから5ページ目。
そこには、
松村「……えっ、」
色が、あった。
無彩色しかなかったスケッチブックで、唯一の、彩り。
花瓶に活けられた、ガーベラの絵だった。
辛い過去を抱えてから、モノクロの絵しか描いてこなかった咲良さんが描いた彩りに見入ってしまう。
『……色、使えるようになってきたの。』
松村「……、そうなんですか。」
『うん。……でも、私は前の絵も好き。この絵も好きだけど、私らしさを出せてたのは、前の無彩色の絵だったと思う。……ただ、売れる絵ってこういうのだと思うんだよね。道で売られてて、目を惹くのは、色のある絵。……両方、描きたい物を描いてるから、どっちも好きなんだと思うけど。』
松村「……。」
『……私は千晃くんの書いた世界が好き。……あの作品って、千晃くんが心から書きたいって思ったものなんでしょ?私にはちゃんと伝わってるよ。……私、普段ぜんっぜん本読まないけど、ちゃんと伝わったから、あの小説が好きになったの。』
松村「……っ、」
『……曲げる事ないよ。諦める事ないよ。売れるとか売れないとか、そんなの関係ない。……自分の気持ちを捨ててまで作り上げる世界なんて嘘だもん。紛い物だもん。……何かの賞を取ってたとしても、偉大な小説家が書いた作品でも、本屋さんでいろんな人が手に取ってたとしても、紛い物なら私は読まない。
千晃くんの気持ちに、作品に、登場人物に、台詞に嘘がないから刺さったの。だから読んだの。……素敵な作品じゃなきゃ読まないよ。……自分の作品と、自分の才能をそんな風に手放したら勿体ないよ。』
松村「……。」
280人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花火2016(プロフ) - のさん» コメントありがとうございます!まいやんとのお話考え中ですのでしばしお待ちください!✨ (3月10日 16時) (レス) id: d050ed87d3 (このIDを非表示/違反報告)
の(プロフ) - 白石麻衣ちゃん推しとしても今回出番あったのとっても嬉しいです。2人が仲良くなっていくところとかまた見れたらいいな。 (3月9日 21時) (レス) @page8 id: 84741cfeca (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ