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松村「……、あの小説、面白かったですか?」
『あの小説って、さっき読んだやつでしょ?面白かったよ、バ先から帰る前にも、「そういえば…」って思って、ちょっと見返しちゃってたもん。』
松村「……本屋にあれが並んでたら、買います?」
『え?』
松村「……もしあの作品のあらすじが書いてあるポップを本屋で見たとして、……咲良さん、手に取ります?」
『……どうしたの、いきなり。』
松村「……、僕の本は売り出しにくいみたいです。……もっとキラキラした……大学生っぽいやつの方が売れて、こういう、人を選ぶような暗めの作品は売れないんですって。」
『……え、誰が言ったの、そんな事。』
松村「出版社の文芸編集部の方です。……咲良さんが絶賛してくれた小説、出版社に持ち込んでみたんです。……ただ、完膚なきまでに叩き潰されました。……書きたい物を書いてたら、売れないらしいです。……僕の好きな作家の、一番好きな作品も、売れなかった類だったんですって。」
『……。』
松村「今、何が嫌かって……現実を突きつけられた事じゃなくて、……それでもまだ、小説を書く事を諦めきれてないって事なんです。」
『っ、』
松村「……咲良さんに嘘つきました。……本当は小学生の頃から小説家になりたかったんです。……太宰治や、芥川龍之介、坂口安吾みたいになりたくて、中学生からずっと密かに小説書いてました。……多分親も知らないです。
……中学生の時、小説家を志してる事を当時の親友だった人に言ったら、まぁまぁ馬鹿にされて、半笑いで「お前現実見えてないの?」「そんなん稼げないじゃん。」って言われた事があるので……それ以降、誰にも言わなかったんですけど。
憧れの作家さんがいる出版社に何度も小説送ってみて、何度も落選して、……これで最後にしようって思いながら書いたのが、咲良さんが絶賛してくれたあの小説です。」
『……。』
松村「……でも、最後にしようって思いつつ、期待してたんだと思います。……僕が書いた世界が本屋に並んでるのを。……たとえ売れなくても、書きたい物を書きたいんです。……わがままなんですよ、僕。……一見、全然、害のないような顔しといて、自分の事しか考えてないんです。……こんな自分死ねばいいのになって、思います。……これからも思い続けます。」
『……っ、』
松村「……もう、書けません。これ以上、現実見たくありません。……すみません、楽しみにしてくれてたのに。」
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花火2016(プロフ) - のさん» コメントありがとうございます!まいやんとのお話考え中ですのでしばしお待ちください!✨ (3月10日 16時) (レス) id: d050ed87d3 (このIDを非表示/違反報告)
の(プロフ) - 白石麻衣ちゃん推しとしても今回出番あったのとっても嬉しいです。2人が仲良くなっていくところとかまた見れたらいいな。 (3月9日 21時) (レス) @page8 id: 84741cfeca (このIDを非表示/違反報告)
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