怪演女優 Fifty Six

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『おじゃましまーす……おぉーっ、』

松村「すみません、狭くて……。」

『なんか男子一人暮らしって感じ……なんか新鮮。』

松村「あっ、荷物……どこでも好きな所置いてください。いまお風呂ためて、タオル持ってきます。」

『あー、いいよいいよ、そんな気遣わなくて。お言葉に甘えて、荷物この辺……にっ、よいしょっ、』

松村「……なに入ってるんですか？」

『ん？こっちのでっかいスーツケースは着替えとかの大事な物で、こっちのでっかい鞄はね、画材入ってるの。』

松村「画材、」

『美大生だからさ。……あれ？待って、私達、自己紹介とか、なんにもしてないね？』

松村「……あっ、」

『あはは、だめじゃん、得体の知れない女家に入れたら。』

松村「……今更、ですけど……。お名前、いいですか。」

『……サラ。淡井 咲良(あわい さら)。鶴橋美大、油画専攻の二年生。でも一浪してるから、年齢は21歳。』

松村「……淡井さん、」

『あぁ、サラでいいよ、みんなそう呼んでるし。』

松村「……檜山 千晃(ひやま ちあき)です。……秀胤大、文学部の三年生、21歳です。……図書館でバイトしてます。」

『秀胤大ってめっちゃ頭いいとこじゃん。……しかも三年生ってすっごい忙しいんじゃないの？……、私、居て大丈夫？』

松村「あっ、もう……就職先も決まってるし、論文も書けちゃってるんで……あとは残った単位とるだけなんです。」

『すごーい……。めっちゃ優秀なんだねぇ……。』

松村「いや、全然……そんな事ないんです。」

『……でもさ、なんで私のこと拾ってくれたの？』

松村「……、雨が、降ってたから、……ですかね。」

『っ、……ふふ、……あははっ！！何それ〜！！』

松村「……すみません、……それしか、思いつかなくて、」

『んふふ、……あ、バイトと住む場所決まったら、すぐに出ていくし、長居はしないから。……安心してね？』

松村「長居、……していいですよ、」

『……。』

松村「……そのつもりで、誘ったんで。」

『……、優しいねぇ、……ありがとう。』

松村「……いえ。」

『……っ、お腹なったの聞こえた？』

松村「……チキンラーメン、ありますけど、」

『食べたい……！！』

松村「じゃあ、作るんで……待っててください。」

『なんか手伝おっか？』

松村「あ、いえ、ゆっくりしててください、」

『わかった。』

松村「……。」


勢いで家に連れ帰ってしまったその人は


『……。』


雨を見ていた。

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