怪演女優 Fifty Six

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『大丈夫？結構高いけど。』

田中「うん、大丈夫。……やば、久々すぎるな。」

『でもここだと人ほとんど居ないから誰かとぶつかる心配とかもないから大丈夫じゃないかな？』

田中「ずっこけても笑わないでね。」

『……フリ？』

田中「違うわ。」


いひひ、といたずらっ子みたいに笑うAちゃんが可愛くて、高所への恐怖が薄れていく。

大好きな子とのスノボデートってこんなに幸せなんだな。と、白い世界にいる女神を見て思う。

見た目はばちばちにスノボできる人だけど。


『どうしよ、先に私滑っちゃおっか。』

田中「じゃあ……あの辺で待ってて。」

『止まれるように頑張る。』

田中「頑張って。」

『じゃあ行ってきまーす。』

田中「行ってらっしゃーい。」


そう言ってAちゃんは滑っていって

目的地の少し前くらいで


『わぁっ、！？』


盛大にコケた。

Aちゃんの可愛いポイント・クールでなんでもできる感を醸し出しながら意外とドジな所。

ずっこけても笑わないでね。と自分で言ったにも関わらず、その盛大なコケ具合には流石に笑ってしまった。

あー、やば、かわいい。

スキーウェアが真っ白に染まってるAちゃんを見て笑ってると「笑うな！」と下の方から怒られる。

こういう恥ずかしがりな所も可愛いなと思いながら、Aちゃんの所まで滑っていった。


『笑い声めっちゃ聞こえてたからね。』

田中「だって盛大にコケるから。」

『……スノボ上手いとは言ってないもん。』

田中「はは、ごめんごめん。……はい。」

『……ありがと。』


手を差し伸べると、ぎゅっと手を掴んで起き上がるAちゃんが可愛くて力が緩んでしまう。

と同時に、二人して雪山にぶっ倒れる。

なんかJR SKISKIのCMみたいだな。……そういやAちゃん10代の頃出てたよな。

そんな事を思いながら、体全体で雪を感じる。

隣を見ると、Aちゃんが白い息を吐きながらこちらを見てきて、心臓がやられそうになった。


『……なんかフィクションの世界みたいだね。』

田中「ジャンルは？」

『……ミステリー。』

田中「雪山で事件起こるやつだ。」

『……金田一とか？』

田中「コナンじゃないよね。」

『ね。』

田中「……そろそろ起き上がる？」

『んー、……もうちょっとこのまま。』

田中「……こっち向いて。」

『すみません、写真撮るなら先に事務所に……。』

田中「よく言うわ。」

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