怪演女優 Fifty Six

ゲレンデ ページ45

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Juri side

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Aちゃんは物欲がない。

お洋服やジュエリーは貰ったら喜んでくれるけど、本来なら自分で好きな物を選びたいタイプ。

化粧品なども同じく。……そもそも俺がAちゃんの喜ぶ化粧品を選べるとは思えない。

家具や家電はAちゃんが欲しいと思った物はその都度買ってるみたいだし、正直なんにも思いつかない。

本当はサプライズとかにしても良かったんだけど、せっかくの誕生日は喜ぶ事をしてあげたくて。

というわけで、二日前、普通に聞いてしまった。


田中「ねぇ、今年の誕プレ何がいい？」

『え？』

田中「これ欲しいんだよなー、とかある？」

『……あー、物じゃなくてもいい？』

田中「うん。……え、俺からの愛情とかそういう、」


『スノボ行きたい。』


田中「……最近マジでスルーするようになったね？」

『いちいち突っ込んでたらキリないから。』


というわけで、当日。

Aちゃんリクエストの「ゲレンデがとけるほど恋したい」を流しながらスキー場へと向かった。

ちなみに俺はめっちゃ上手い訳でもないし、かなり前に友達の付き合いでちょっと行ったくらい。

Aちゃんと行くのは初めてだからかっこいい所を見せたいけれど、見せられる可能性は低い。


『朝ごはん作ってきたけど食べる？』

田中「え、さっきキッチンで作ってたのそれ？」

『そう。ホットサンド作ってきた。』

田中「うわぁ、絶対うまいやつじゃん。」

『食べたい時渡すから言ってね。』

田中「いま食べたい。」

『中身ぼろぼろぼろってなるから気をつけてね。』

田中「ありがと。いただきまーす。」

『はーい。』


一口目でトマトがぼろぼろぼろとなった。

見事にフラグ回収を成し遂げた俺の「あ」の一言にAちゃんも「あ」という顔をする。

こういう時に「なにやってんのよー！！」とかは言わず、黙ってティッシュで拭いてくれる所が好き。


田中「……すみません。」

『……食べにくい物作っちゃった私が悪いよね、っ、』

田中「あっ、ちょっ、やめて、嘘泣きやめて、」

『えーんえんえん。』

田中「ハリウッド女優とは思えないほど棒読みじゃね？」


こうやってふざけながらも最終的には笑って「いいよ、取るからじっとしてて」と言ってくれる所も好き。

何年経っても、愛情が増していく。

ふと、こんな事を思い出した。



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波多野ちゃん誕生日おめでとう🎂

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