怪演女優 Fifty Six

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松村「……っ、」

『……直球だな。』

深澤「俺と付き合ったら絶対後悔させないし、絶対楽しいと思うよ。まだ会ったばっかだから信用出来ないかもだけど、浮気だってしないしさ？」

『出会って一日も経ってないのに何言ってんのよ。』

深澤「やだ？……もしかして既に先客いる？」

『いや、いないけど、』

松村「っ、……」

深澤「じゃあいいじゃん、断る理由ある？」


『えぇーっ、でも、……っ、』


松村「……。」

深澤「……っ、はは、ごめん、キス貰った、」

『……さいってー、』

深澤「ごめん、怒った？」

松村「……っ、」


……見なきゃ良かった。……来なきゃ良かった。

……でも、出会わなきゃ良かったとは、思えなかった。


「20円のお返しです、ありがとうございましたー。」

松村「……。」


忘れよう、全部。

記憶を飛ばす方法なんて簡単だ。

大量に酒を飲んで、飛んでしまえばいい。

アルコール中毒で死んでも本望だから。


松村「……っう、っ、」


酒の匂いが自分から香るのが気持ち悪くて

少し、トイレで吐いた。

口の中が気持ち悪くて歯を磨いて、顔を洗った。


松村「……。」


鏡に映る男は、酷い顔だった。

彼女がキスを押し退けると、思い込んでいた僕が悪い。

そうだ、彼女はそういう人だった。

僕なんかより明るくて、自由で、とても魅力的な人。

誰もが皆、彼女の事を好きになる。

……僕も含め。


『ただいまぁーっ、』

松村「……。」

『……っ、うわぁっ、びっ、くりしたぁ……。』

松村「……っ、」

『そんな真っ暗なとこいないでよ、びっくりした……。』

松村「……。」

『……お酒飲んだでしょ、顔赤いよ？……大丈、っ、』


いても立っても居られなかった。

気が付いたら、彼女を抱き締めてしまった。

僕は、完全に酔っ払っている。

嫉妬なのか、怒りなのかすら、分からなかった。

彼女を自分の物にしたいなんて独占欲があるはずもない。

突然抱き締めた最低な僕を突き飛ばす事もせず

かと言って、背中をさする事もせず


『………。』


彼女は、……咲良さんは、じっと僕に身を任せた。


松村「……っ、ごめんなさい、」

『……なんで千晃くんが泣くの、？』

松村「っ、すみません、っ、……ごめんなさい、」

『……今日は寝よう？ほら、ベッド行こう、』

松村「……っ、好きです、」


『……。』

松村「……咲良さんが、好きなんです、っ、」

『……っ、へぇ、』

松村「ごめん、なさ、……っ、」

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