怪演女優 Fifty Six

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まさか二人で、カップラーメン片手にこんな話をする日が来るとは思ってなかった。

そもそも環奈ちゃん自身も、あんまり辛い事は聞き出さないような子だから、言ってこなかったけど。

こうやって口にすると、なんかちょっとむず痒い。


橋本「100％気持ちが分かるわけじゃないけど、元彼が新しい彼女作ったような感覚に近い？」

『そんな感じ。……多分ないけど、プロポーズされました。ってなっても、すぐにうんって言えないかも。』

橋本「……。」

『相手が悪いわけじゃないよ？完全に私の問題。』


樹くんとの関係が慣れと言ったけど、「このままでいいのかな」と思っているのには、もう一つ理由があって。

心の中に微かに残っているトラウマを抱えた状態でずるずる行くのは、樹くんにも申し訳ないって思っていて。

その間に樹くんの本当の運命の人が現れたら。と思うと、そのチャンスを奪ってしまってる訳だから。

言語化するのが難しいような感情になって、普段はできるだけ飲まないようにしてるスープに口をつける。

スープ少なかったかな。なんかしょっぱいなぁって思いながら、何とか気を紛らわせようとした。


橋本「……Aちゃんは優しすぎるんだよ。」

『そう？』

橋本「相手を思いやりすぎちゃうような節あるじゃん。なんていうか……自己犠牲型っていうかさ。」

『……まぁ、否めない。』

橋本「Aちゃんはもっと自分の幸せ考えていいんだよ。……あの時は話聞けなかったけど、「この人は私の物だから」って主張もできた訳じゃん。」

『うん、……そうだね。』

橋本「優しすぎるのがAちゃんの好きな所でもあるんだけどさ、それに押し潰されそうになってる時があるような気がして……たまに心配になる。」

『……流石だなぁ。』

橋本「何年親友やってると思ってるの？」

『ふふ。……そうだね。』


優しさだ、って言えばそれまでなんだけど……メンタルがそんなに強くないって言うのもある気がする。

ノックされたくらいじゃ壊れないけれど、ふとした時にどんっと強く衝撃を受けた時、すぐに壊れる。

その点、樹くんはそんなにメンタルが弱くない。

もちろん参っちゃう時はあると思うけれど、それをあんまり私にも見せないから、強い人だと思う。

魅力の溢れる人を縛ってていいのだろうか。……なんて、また自己犠牲みたいな考え方をしてしまう。

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