怪演女優 Fifty Six

第二話 忘れ物とテキーラ ページ20

第二話



彼女が僕と住み始めてから、一週間が経った。

咲良さんは完全にこの生活に慣れてきていた。


『……ぁ、おはよーっ、』

松村「……おはよう、ございます、」

『んんーー……っ、朝早いねぇ……。今日も一限から、？』

松村「はい、……咲良さんは、？」

『私は三限からっ、……はぁ、もうちょい寝よっかなぁ、』

松村「ゆっくりしててください、」

『はぁーい……。いってらっしゃあい……。』

松村「行ってきます。」

『……っ、……なんだこれ、』



松村「っ、」


二限で使うプリントが入ってるファイルを忘れた。

かなり大事なやつ。

大抵は誰かがコピーさせてくれるんだけど

ぼっちに人権なんてない。


山下「……っ、あ、あの、」

前田「おい、なんかすっげぇ美人来てんだけど、」

兵頭「はぁ！？そんな訳……っ、おいおいまじかよ！？」

前田「おねーさんどうしたの、」

『あ、忘れ物届けに来たんだけど……。』

松村「……えっ、」

山下「……っ、」


「え、おねーさん大学生？」

『うん、鶴橋美大。』

「鶴美！？うわ、美大生ぽいわー！！」

「てか超かわいくね！？」

松村「……っ、」

『あっ、いた。』

兵頭「……えっ、」

松村「なんで、」

『めっちゃ探したよ〜……はい、これ、』

松村「……これ、」

『中身分からなかったから見ちゃった。授業のやつだよね？……え、もしかして遅かった、？』

松村「……今から、使うやつです、」

『うわぁ、よかったぁ……。じゃ、頑張ってね〜！』

松村「……っ、ありがとうございます、」

『ふふ、ばいばぁい、』

松村「……。っ、な、なんですか、っ、！？」

兵頭「ねえ、覚えてる？この前合コン誘った！！」


・


兵頭「……あいつ名前なんだっけ？」

前田「覚えてない。」

兵頭「だよなぁ〜。」


・


松村「……、はい、」

前田「あの子と付き合ってんの？」

松村「えっ、」

兵頭「どうなの！？」

松村「……いえ。」

兵頭「マジで！？じゃあ俺にもチャンスある！？」

松村「……さあ、」

兵頭「って事はあるって事か！！」

松村「……じゃあ僕、これで、」

前田「あっ、待って待って待って、」

松村「……っ、なんですか、」


前田「今度さ、あの子紹介してよ。」


松村「えっ、」

前田「付き合ってないんだからさ、いいよね？」

松村「……。」


こういう時、どうすれば良いのだろうか。

恋人じゃなければ了承すべきなのか。

片思いは断る理由になるのだろうか。

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