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江口「てかよく見ず知らずの男の所に行こうって思えたな。見ず知らずの女を泊めた男も然りだけど。」
『雨が降ってたから、ですって。』
江口「……なるほどなぁ、」
『え、分かります?』
江口「雨が降ると、人間は思い切った事したくなるんだよ。不倫とかがいい例か。……それが、その彼にとっては、お前を家に誘うって事だったんだな。」
『ふーん……。』
江口「まぁ、そんな重く考えなくていいんじゃねえかな。もしかしたら野良猫拾うくらいの感覚だったかもしれねえし。」
『えへ、野良猫?』
江口「猫の絵とかねえの?」
『スケッチブックにいっぱい描いてるんで……っ、あれ?……明日持ってきます。』
江口「お、楽しみ。」
『じゃあ、そろそろ戻りまーす。』
江口「はーい。おつかれー。」
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松村「……。」
なんとなく、彼女が帰ってこない気がした。
ふらっとどこかに行ってしまうような気がして。
昨日会ったばかりなのに
何故だかそれが、とても嫌だった。
松村「……。」
少し古ぼけた表紙のスケッチブックには
猫と、子供と、老人しか描かれていなかった。
松村「……っ、」
『あ、良かった、帰ってた。』
松村「……おかえりなさい、」
『……へへ、ただいまぁ、……あ、あったあった。』
松村「……あの、すみません、」
『ん?』
松村「……少しだけ、中見ちゃいました。」
『あぁ、いいよ?見たい時に見て?』
松村「……ありがとうございます、」
『……、ん?』
松村「……なんで、無彩色だけなんですか。」
『あー……やっぱ気になる?』
松村「……嫌なこと聞いちゃったら、すみません、」
『大丈夫。んー……深い理由はないんだよね。黒が好きなだけなの。これで何度か賞も貰えたし、飽きるまでは黒と白だけで勝負しよっかなって。』
松村「……素敵ですね。」
『……。』
松村「……、なんですか、」
『いつか、千晃くんの絵も……。……いや、辞めた。』
松村「えっ、?」
『……ん?千晃くんみたいな魅力の溢れる人を描くには、黒と白だけじゃ勿体ないから、きっと私には役不足だよ。』
松村「……っ、」
うっとりとしたような目付きで、頬を撫でられる。
その瞬間、ようやく気付いた。
何もかも真逆な彼女に、落ちていた事を。
初恋を、奪われていたって事を。
『……千晃くん?……もしもーし、』
松村「っ、はっ、はい、」
『大丈夫?生きてる?』
松村「……生き、てます、」
『よかった、』
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花火2016(プロフ) - ぴさん» ありがとうございます!波多野ちゃんも喜んでおります!笑 皆さんのおかげで素敵な一年になりそうです笑 (2月9日 23時) (レス) id: d050ed87d3 (このIDを非表示/違反報告)
ぴ(プロフ) - 更新ありがとうございます!そしてはたのちゃんお誕生日おめでとう!25歳!はたのちゃん、花火2016さまも素敵な一年になりますように (2月9日 15時) (レス) id: 6f5cf267a1 (このIDを非表示/違反報告)
花火2016(プロフ) - ぬょさん» コメントありがとうございます!もうここまで来たら一旦倦怠期迎えたこと書いちゃえ!!って思って書きました笑笑 はたちゃんの「は」は私の「は」です!!(違う) (2月2日 15時) (レス) @page17 id: d050ed87d3 (このIDを非表示/違反報告)
ぬょ(プロフ) - 花火さんの報告(?)の次のお話がじゅりはたの倦怠期なのあまりにも素直すぎて花火さんが愛おしいです笑はたちゃんの「は」は花火さんの「は」だったんですね(?) (2月2日 15時) (レス) @page18 id: 81b3a9c5f9 (このIDを非表示/違反報告)
エム(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいています。私は他の方との恋愛模様も見たいなぁと思っています。花火さんが楽しく創作活動できる方を選んでください! (2月2日 2時) (レス) @page16 id: f8c2db3e69 (このIDを非表示/違反報告)
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