怪演女優 Fifty Six

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古川「じゃあ絶対明日も匂い違うじゃん。」

『申し訳ないけどワンナイトもしてない。』

古川「……え、何、どういう事？」

『……雨に濡れた所を拾われた、感じ？』

仁村「……え、大丈夫なの、その人。」

『いや、普通の人だよ。普通っていうか……秀胤の三年生。』

仁村「はぁ！？エリートじゃん！！」

古川「ちょっ、詳しく聞かせて！！」


江口洋介「淡井ー、ちょっと、」


『はぁい、』


・


「であるからして、……」

松村「……。」


《淡井 咲良》


松村「……っ、」


《2022年 全日本学生油絵コンクール 銀賞・淡井 咲良》

《第2回 K絵画コンクール 特別優秀賞・淡井 咲良》


松村「……、」

「そこ、聞いてる？」

松村「っ、すみません、」

山下「……。」

「はい、じゃあ続けますよ。」

松村「……っ、」

《淡井 咲良「転落」》《淡井 咲良「人間失格」》


松村「……。」



・


『こんな感じかなぁ……っ、』

江口「タイトルは？」

『「心停止」。』

江口「暗いな。」

『えぇ、でもそれ以外に思い付かない。』

江口「そうかぁ……。じゃあ課題これでいいか？」

『おねがいしまーす。』

江口「はい、お疲れ様。」

『うわぁ、ありがとうございます……。いただきまぁす、』

江口「どうぞー。」

『んーっ、んまぁ、……っ、』

江口「淡井、」

『はい？』

江口「そろそろさ、……色使ってみないか？」

『……いや、色使うと、私の良さが消える気がするから、』

江口「そうかなぁ……。ディテールとかも細かいし、色塗りだって上手いんだから、色使ったらもっと作品が幅広くなると思うんだけどなぁ……。」

『それに、私が入選してるのも、油絵の中でもタブーとされてきた黒を扱えているからです。色を使った私の絵なんて誰も見向きしてくれないですよ。』

江口「いや、まぁ……。淡井がな？納得する絵を描けなきゃ意味ないから、それでいいなら別にいいんだけどさ、」

『まぁ、気が変わったら色使ってみます。』

江口「……、てか、家見つかったのか？」

『あっ、はい、泊めてくれる人見つかって。』

江口「ごめんな、泊めてやれなくて。」

『いやたしかに先生とは仲良いですけど、流石にいま家行っちゃったら変な噂たっちゃうでしょ？当然ですよ。』

江口「んで？どんな子が泊めてくれてるんだ？」

『秀胤大、文学部の三年生。』

江口「……すげぇの捕まえたな。」

『いや、って思うでしょ？彼から言ってくれたんです。』

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