怪演女優 Fifty Six

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その背中はどこか寂しそうで、野良猫のようだった。

もしかしたら、今日は

死ぬべき日じゃなかったのかもしれない。


松村「できました、」

『あっ、ありがとう……。んん、いい匂い……。』

松村「冷めないうちに、どうぞ。」

『いただきまぁす……。』

松村「いただきます。」

『っ、んふ、……っ、うまぁ……。』

松村「……よかったです、」

『ねえ、千晃くんのこと教えてよ。』

松村「……教えるような事は、何にもないです、」

『いいの、知りたいの。……趣味とかないの？』

松村「……読書です。……すみません、つまらない返しで。」

『んん、そんな事ないよ、素敵な趣味じゃん。』

松村「……咲良、さんは、」

『んー……まぁ、絵になるのかなぁ……。よく公園に行って、遊んでる子供とか、野良猫とかデッサンしてる。……見る？』

松村「……、上手ですね。」

『えへへ、ありがとう。』

松村「……あ、寝る場所、」

『あっ、寝袋あるから気にしないでベッド使って？』

松村「いやっ、でも、」

『流石に助けてくれた人を床で寝かせられないから。』

松村「……、はい、」

『んふ、ありがと。……っ、あっ、』

松村「ん、？」

『……鞄の中に780円入ってた、』

松村「良かったですね、」

『やったぁー……っ、明日のお昼ご飯は食べれるぅ……。』

松村「……っふ、」

『……ふふ、千晃くんの笑った顔、初めて見た。』

松村「っ、……。」

『途端に黙んないでよ、……っ、ふふ、かわいい。』


・


松村「……っ、」

《大学いってきます！ サラ》

松村「……。」


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仁村紗和「なんか顔色いいね。」

『そう？』

仁村「うん。なんか昨日よりビジュいい。」

『ご飯食べたからじゃない？』

仁村「良かったじゃん。」

古川琴音「待って、……咲良の髪から違う匂いがする。」

仁村「え！？」

『なになに、』

仁村「ほんとだ、昨日と違う匂いする。」

古川「まさか二日間にわたり男引っ掛けて……！？」

『んなわけないでしょ。』

仁村「いや、咲良なら有り得るね。」

『私の事なんだと思ってるの？』

仁村「男性ほいほい。」

古川「てか女性もほいほいされるっしょ。」

仁村「じゃあ人間ほいほいでファイナルアンサー。」

『酷い言われようだな。とにかく違うから。』

仁村「じゃあなんで匂い違うの。」

『……、それは、』

仁村「……まさか、」

古川「彼氏できた？」

『いや彼氏では……ないかな。』

仁村「ワンナイトか。」

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