怪演女優 Fifty Four

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福士「いやっ、そういう事ではございませぬ。少々言葉足らずで申し訳ない……。」

水上「あぁ、いえ、良いのです。そもそも……上様は大奥の男子にもお声をかけなかったとお聞きしてます。……まだ、誰かと夫婦になる気がなかったのでしょう。」

福士「……、それでしたら、私よりも、上様のお付きの潮田様にお聞きするのがよろしいかと。お二人は幼き頃から一緒に過ごしてきたと聞いております。打開策をご存知かもしれません。」

水上「左様にございますか……。では早速、潮田様にお声をおかけしてみます。……天璋院様、お話を聞いてくださり、ありがとうございました。」

福士「私は話を聞く事しかできませぬ故、また何かございましたら、いつでもお話ください。」

水上「はっ。」

福士「……、もしかすると、まだ、お子をお作りにはなりたくないのだろうか……。」


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生田「あぁ……幼き頃もよくされておりました。無礼な事を申した男子を泣かせ、母上様にお叱りを受ける時、必ず狸寝入りをしてやり過ごそうとされておりました。」

水上「……どうすれば、お近付きになれるでしょうか。」

生田「では……御台様から、上様に何か贈り物をされてはいかがでしょう。そうすれば、心の距離も少しは縮まるのではないですか？」

水上「贈り物……。はて、……上様は何がお好きなのでしょうか。そのようなお話もまだしておらず……。」

生田「そうですね……。甘味はお好きですが、以前、毒を盛られた経験があります故、避けた方がよろしいかと。」

水上「はぁ……。」

生田「……、上様は自然の物がお好きですよ。鯉や金魚などの生き物だけでなく、植物などもお好きです。」

水上「植物……。そうですか、ありがとうございます。では早速、上様への贈り物を選んでまいります。」

生田「行ってらっしゃいませ。……。」


古川「上様、御台様がお越しです。」

『……通すが良い。』

水上「っ、上様。お渡ししたい物がございます。」

『……っ、』

水上「近くに咲いていたスミレにございます。丁度見頃の時期になりました故、上様にも見ていただきたく、」


『っ、無礼者！！』


水上「えっ？」

古川「上様、どうかされましたか、」

『さっさとそれを捨てぬか！！早う！！』

水上「はっ、はい、……っ、」

『はぁ、っ、……はぁっ、……』

古川「上様……。」

『帰れ。』

水上「っ、」

『帰れ！！』

水上「……、御無礼いたします。」

『……。』

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