怪演女優 Fifty Four

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『……。』

水上「……。」

古川「……本当に、よろしいのですね？」

『将軍に二言はない。』

古川「……宗方、」

水上「……上様のご命令です故。」

古川「……。」

生田「……では。……はじめ！！」

『……、？』

水上「……。」

『……っ、やああああっ！！！！』

水上「うおおおおおおっ！！！！」

生田「……、勝負ありましたね。」

古川「えっ、」

生田「上様の呼吸が乱れております。……宗方殿は、これを狙っていたのかもしれません。……恐ろしいお方です。」

古川「……。」

『……、うわあああああ……っ！！』

水上「隙あり！！」


『っ、』


古川「……っ、竹刀を落とさせた、」

生田「どんな手を使ったとて、刀がなければ勝負はできませぬ。……これは勝負ありですね。」

『……。』

水上「上様、申し訳ございません。……大丈夫で、」


『触るな。』


水上「……っ、」

『……何故あんな勝ち方をした。』

水上「……。」

『……何故こんな惨めな負け方をせねばならぬ。武士の子なら正々堂々と立ち向かうのが筋ではないのか！！』

水上「……、恐れながら、あそこで真正面から向かったとて、勝ち目がなかったからにございます。」

『っ、……』

水上「お見事でございました。正直、上様の武術に圧倒された故、あんな手を使うしかありませんでした。……しかし、武士の子に有るまじき卑怯な勝ち方をして、上様を傷付けてしまったのもまた事実。……どうか、拙者の御無礼をお許しください。」

『…………。』

水上「この勝負、卑怯な勝ち方をした拙者の負けにございます。瀧山殿、申し訳ございませぬ。……御台所になるというお話は、なかった事に……。」

古川「宗方……。」

水上「では、拙者は……」

『待たれよ。』

水上「……、はっ。」

『……どこまで惨めな思いをさせれば気が済むのじゃ。……ここで誰が異を唱えようと、あそこで集中が切れ、竹刀を落とした私の負けじゃ。』

水上「……っ、」


『……将軍に二言はない。……そなたと婚姻する。……望み通り御台所にしてやろうではないか。』


水上「……、はっ。」

古川「……っ、かたじけのうござる……！！」

水上「若輩者ですが……末永く、お頼み申します。」

『……、こちらこそ。』

生田「……。」



そして、家政公と鈴之助様の婚儀が執り行われた。

新たな御台所の誕生であった。

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