怪演女優 Fifty Three

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Hokuto side

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正直、予測はできていた。

自分も事務所の騒動が原因でCMを打ち切られたし、周りも全員、自分と同じような事になってる。

ただまさか、監督直々にこう言われるとは。

……くるなぁ、中々。……メンタルに。

隣にいるAちゃんにも迷惑をかけてしまっていると思うと、……怖くて隣が見れない。

もしかしてAちゃんも、ジャニーズ事務所の人間は外すべきだと思っていたんじゃないか。

そんな訳ないのに、……そんな訳はないと信じたいのに、頭が勝手にネガティブ思考に走る。


「……波多野さんはどう思う？波多野さんの意見も聞きたくて、一応呼んだんだけど……。」

『……松村さんを外すのは、確定なんですか？』

「いや、まだ確定したって訳じゃないけど……うん、そうなる可能性は極めて高いかなぁ。」

『……じゃあ、私の意見を言いますね。』

「うん、いいよ、どんどん言って。」


『……なら、私も出演を辞退させていただきます。』


思ってもいなかった言葉に、思わず隣を見た。

何を言われるのかとビクビクしていたけれど、まさかこんな強気な発言が出るとは。……想定外だった。


「いやっ、ちょっとそれは困るよ、」

『例の件って、悪いのは亡くなった前社長と、黙認してた事務所ですよね。……所属しているタレントって関係あるんですかね。……わざわざ出演を取り消して、一から選び直す必要あるんでしょうか。』

「いやぁっ、それは……。」

『たしかに現時点でジャニーズ事務所のタレントを使う事にはリスクがあると思います。それは私も分かっています。……ただ、それを理由に、……今、所属しているタレントを、……こんなに、……分かりやすく潰す必要があるのかなって、私は思いました。』


Aちゃんの発言には、迷いがなかった。

Aちゃんの心からの発言に、心が揺れる。

こんな風に思ってくれてたんだ。

泣きそうになるのをぐっと堪えるけれど、我慢できなくなりそうで、思わず顔を下に向けた。


『……すみません、生意気な事言って。……でも私は、「松村北斗」と仕事がしたいんです。ジャニーズどうこうは関係ありません。』

松村「……っ、」

『……それでも彼を、ジャニーズだからという理由で外すならば、私も出演を辞退させていただきます。』

「ちょっ、」

『では、これで失礼します。……帰ろう？』

松村「……っ、失礼します、」

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