怪演女優 Fifty Two

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You side

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あの記事を読んで、唖然とした。

こんな仕事をやってると、事実無根の事を書かれる事だってある。

以前、父と買い物をしていた所を写真に撮られ、それを私の熱愛報道にされた事もあったし、こういう事はまぁまぁ慣れている方だと思っていた。

そんな事あるわけないじゃん。と思いつつ、Twitterを見ると、


『えっ、』


「波多野A」「Aちゃん」「枕営業」が、トレンド入り。

恐る恐るそれをタップすると、たくさんの投稿。



＠aaaaa

Aちゃんが枕営業なんて有り得ないでしょ。
デマ情報拡散しないでください。


＠bbbbb

波多野A枕営業だったらしい
うわーディズニー作品楽しみにしてたのに見る気失せたわ


＠ccccc

波多野Aの演技好きだったのに枕か……。がっかりだわ。


＠ddddd

そんな情報鵜呑みにする方が馬鹿でしょ。全員まとめて名誉毀損で訴えられる可能性あるから拡散しない方がいいよ。


＠eeeee

こんな情報流されて可哀想……。



想像以上にいろんな人がこの情報を信じていたし、想像以上に反論してくれる人もいて。だけど皮肉な事に、デマ情報はみるみると拡散されていった。

気付けば、ベッドに座り込んでいた。

今日も撮影だけど、こんな情報が拡散されている中で現場に行ったら、周りの人になんて言われるんだろう。冷たい目で見られるのかな。

無罪の罪で、オファーをいただいた仕事も無しになるのかな。

そう思うとなんだか憂鬱な気持ちになって、そのままベッドに倒れ込んだ。

だけど、ここで泣いたら認めてしまう事になるような気がして、こぼれそうになる涙を、ぐっと唇を噛んで堪える。


その時、スマホが鳴った。

樹くんだった。


いつもの癖で出ようとしてしまうけれど、今日はなんだか、躊躇した。

樹くんもあの事実無根の情報を信じていたとしたら、電話に出たら、「そんな奴だとは思わなかった、別れよう」と言われるかもしれない。

まだ別れたくない、と思い、躊躇っていると、電話は切れた。

このまま無視する事もできたけれど、それこそ情報を認めているような感じになってしまう気がして、深呼吸をして、樹くんに電話をかけ直した。

ワンコール、ツーコール、スリーコール。


田中「もしもし、」

『……もしもし。』

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