怪演女優 Fifty Two

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『……、これはこれは、斎藤さんじゃないですか。』

鈴木「……これ、お見舞い。」

『あら、カステラじゃないですか。』

鈴木「好きだったよな、これ。」

『んー、五番目くらいに。』

鈴木「……微妙だな。」

『有難くいただきまーす。』

鈴木「……、怪我はどうだ。」

『そこそこ身体は痛みますよ。……殴られたり蹴られたり、ほんっと死ぬかと思いましたね。……あ、なんか凶器持ってる奴もいたな……。』

鈴木「……散々だったな。」

『ふふふ、全部分かってるくせに白々しい反応やめてくださいよ。』

鈴木「……。」

『お父さん、こうなった事の経緯を知ってガチギレでしたよ。いくら電話しても出ないってイライラしてたんで、連絡くらいは返してあげてください。じゃないと身体もメンタルも休まらないんで。』

鈴木「…………。」

『……土下座するって事は、認めるって事ですかね。』

鈴木「……すまなかった。」

『……だったら今すぐ自分の右目くり抜いて私にくださいよ。……なんてね。……怒ってないって言ったら嘘になりますけど、私だって斎藤さんに隠してる事あるし。……本気で腹を立てられるほど善人じゃないんで。』

鈴木「…………。」

『……ちょっとは信じてたんですよ、斎藤さんの事。……なんだかんだ、ちゃんと真実を見てくれてるんじゃないかなって。』

鈴木「……っ、」

『でも、……目の前にあるカステラですら、怖くなってます。……好きな食べ物なのに、手が伸びないんですよ。……全部言わなくても分かりますよね。』

鈴木「……、悪い、」

『……、どうぞ。』

鈴木「はい、もしもし。」

『…………。』

鈴木「……っ、悪い、急用ができた。……また改めて話をしに来る。」

『最後にこれだけ教えてください。』

鈴木「ん？」

『……、私に暴行した人間けしかけたの、斎藤さんじゃないですよね。』

鈴木「……俺じゃない。」

『……。』

鈴木「信じてくれとは言わない。……俺は君に、それほどの事をした。……ただ、俺は、……君を危ない目に遭わせるなんて、出来ない。」

『……、そうですか。』

鈴木「……っ、ごめん。」

『……信じます。』

鈴木「……ありがとう。」

『…………。』



鈴木「……っ、あれ、」


福本「……あ、……どうも。」


鈴木「……入んないの？」

福本「……ちょっと、様子伺ってて。」

鈴木「……入ってあげたら、喜ぶんじゃないかな。」

福本「……っ、」

鈴木「じゃあね。」

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