怪演女優 Fifty Two

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『もしもーし。』

田中「お誕生日おめでとうございます……。」

『あ、ありがとうございま、おぉ、なに、びっくりした、』

田中「へへへ、買っちゃった。」

『え、私いないのに買ったの？』


樹くんのお祝いの言葉と共に映し出されたのは、たくさんの花びら。

楽しそうに持っていたのは、去年よりも小さなピンク色のバラの花束。

私がいないので今年はプレゼント無しかな、と思っていたけれど、まさか居ない間に花束を買っているとは思わず、変な声が出てしまった。


田中「そー、Aちゃんが帰ってくる頃には枯れちゃってるけどさ、これ頑張ってドライフラワーにして、花束にしてみよっかなーって。」

『えぇー、そうなの？凄いじゃん。』

田中「へへ、だからいま必死に調べてるとこ。……ごめんね、サプライズとかには全然なってないけど、当日どうしても花束見せたくって。」

『ううん、嬉しい。わざわざありがとう。』

田中「んへへ、っ、……あ、でも、ちゃんとプレゼントは用意しとくから。」

『え、いいよ、ドライフラワーだけで十分嬉しいよ？』

田中「いーの、こっからは俺の自己満なんだから楽しみに待ってて！！」

『ふふ、はーい、』


心優しい樹くんはプレゼントを用意してくれている、という所までは予想出来たものの、改めてこうやって聞くとやっぱり嬉しかった。

ドライフラワーって色々種類あるけど大丈夫かな、棘で怪我しないかな、と思いつつ、そんな樹くんの思いやりに甘えようと思った。


田中「そっかぁー、Aちゃんもう24歳かぁー……。」

『24歳だよ？』

田中「俺が初めて見た頃はまだ高校生だったのになぁー、いつの間にかこんなに美人なお姉さんになって、今や俺の恋人になってんだからなぁー。」

『NHKの廊下ですれ違った当時は思ってなかった？』

田中「いや、そんなこと思ってる余裕なかったよ。「やべー、可愛いー、話しかけちゃった、あ、やべ、可愛い。」としか思ってなかったし。」

『ふふ、そっかぁ。』

田中「でもAちゃんぜんっぜん覚えてないんだもんなぁー。」

『言うてもう八年くらい経つけどね。』

田中「え、嘘でしょ、Aちゃんに一目惚れしてから八年経ってんの？」

『単純計算だとそうなるね。』

田中「うわー、やべぇ、……でもそっかぁ、俺も28だもんなぁ、今年。……いやー、改めて考えると長かったなぁー、片思い歴。」

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