怪演女優 Fifty Two

ビデオ通話 ページ14

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田中「……あ、もしもーし、」

『はーい。』

田中「起きてた？」

『うん、こっちはこれからお仕事。……そっちもう夜じゃない？』

田中「そう。だから電話終わったらゲームしよっかな〜って思ってた。」

『スプラトゥーン？』

田中「そうそう！……あ、てか、ビデオ通話にする？」

『いいよ、ちょっと待っててね。』


ビデオ通話をする為に奮発して買った新しいスマホスタンドにスマホを立てかけて、ビデオ通話のボタンを押すと、すぐに樹くんの顔が映し出された。

仕事が終わって、この髪の毛ボサボサで眼鏡をかけてるのを見ると、もうお風呂に入ってからしばらく経つんだろうな。と分かってしまう。

分かってしまうのがなんだかちょっとだけ悔しい反面、「もうここまで分かるようになったんだな。」という嬉しさも残りつつある……のも、悔しい。


田中「……あれ、」

『ん？』

田中「髪伸びた？」

『……あぁ！そうそう、役作りでエクステ付けたの。』

田中「へえ、結構ナチュラルなんだね。普通に地毛だと思ってた。」

『でしょ？』


今回、ディズニーのお仕事という事で、準備がいつもとは大違い。

エクステをナチュラルに付けるためだけに韓国アイドル御用達のエクステサロンの方に来ていただいたり、エステも毎週のように予約して貰っている。

「そこまでしなくてもいいですよ。」とは言ったけれど、流石ディズニー。

「美容に手を抜いた結果、作品に影響が出てしまっては困りますので。」と、そこまで言われてしまったら、何も言えなくなってしまう。


田中「どう？しばらく経つけど、やっていけそう？」

『うん、スタッフさんも監督さんも優しいし。……今の所困ってる事もないからアメリカは大丈夫そう。……ニコちゃんも平気？』

田中「うん。ぐっすり寝てる。あれだよね、俺がツアーで遠方に行っちゃう時は、Aちゃんのご実家に預ければ大丈夫でしょ？」

『うん、それで大丈夫。お父さんの連絡先知ってるよね？』

田中「うん、知ってる。」

『じゃあ、それでよろしくお願いします。』

田中「おっけー。」


頬杖を着いてスマホ越しにこちらを見ている樹くんは、着飾っていないのにやっぱりかっこよくって、それにときめいてしまうのが、やっぱり悔しい。

もっと話したい事があったのだけど、部屋のドアがノックされて、マネージャーさんに呼ばれた。


『あ、ごめん、そろそろ……。』

田中「お、おっけー。……行ってらっしゃい。頑張って。」

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