・ ページ50
・
田中「……はは、だよねえ、……行きたくないよねえ。」
『うん、……っ、』
田中「離れたくないって言ってくれて、すっげえ安心した。」
『……でも行かなきゃ、っ、……やだ、ぁ、』
田中「もちろん、寝落ちしない限り、毎日LINEも電話もするから。……距離は離れちゃうけど、ずぅーっとAちゃんのそばに居るよ?」
『うん、っ、……』
田中「はははっ、やめてよ、俺まで泣いちゃうじゃん……っ、」
寒い中、二人でぎゅっと身体を抱き締めあって、ボロボロ泣いているのが馬鹿馬鹿しいけれど、なんだか無性に安心して、我慢せずに泣き続ける。
私の耳元で、樹くんが泣いている声が聞こえてくる。
樹くんが泣いているのなんて珍しくて、ほんの少しだけ驚いたけれど、それでも泣いてくれる事に安心して、抱き締める力を強めた。
『だいすき、っ、……樹くん、だいすき、』
田中「俺もだよ、……大好きって言葉じゃ表せないくらい、大好き。」
『……っ、ふふ、……っ、』
田中「あっち行っても、ちゃんとご飯食べるんだよ。」
『うん、っ、』
田中「彫りの深いイケメンに振り向いちゃ駄目だよ?」
『樹くんしか見てない……っ、』
田中「それから、……」
『……ん、?』
田中「……しんどくなったら、投げ出していいんだからね。」
『……っ、』
田中「……いつでも帰っておいで?待ってるから。」
海外での仕事が上手くいくのか、不安になっていた私の心に、その言葉は深く突き刺さって、止まりかけていた涙がぼろぼろと流れ出す。
「あぁ、ごめんごめん、泣かせちゃったね」と、優しい言葉をかけて、抱き締めてくれた樹くんの声が甘ったるくて、優しくて、心地よくて。
やっぱり離れたくない。だけど、こんなに応援してくれてるんだから、頑張ってこなきゃ。と、少しだけ気合いが入ったような気がして。
身体を離して、樹くんの薄い唇に軽い口付けをすると、樹くんは物足りなそうな顔をしつつも、幸せそうに笑ってくれた。
クリスマス感がほとんど……というか、全くと言っていいほどなかった25日〜26日にかけての深夜だけど、こんなに特別な日はきっとなかった。
『……っ、あ、』
田中「ん?」
『……ラーメン、まだ食べおわってなかった、』
田中「あっ、やっべ、俺もじゃん……っ、うわぁ、伸びてる、」
『……私のも伸びてる。』
田中「……っ、つんめた、っ、」
『んふ、っ、……つめた、』
田中「ふは、こんな冷てえの初めて食った、」
262人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
綾木 麗(プロフ) - 花火2016さん» ごめんなさい、返信めちゃくちゃ長くなってしまいそうなので、ボードの方に送らせていただきます (2022年12月17日 19時) (レス) id: 5a575a9999 (このIDを非表示/違反報告)
花火2016(プロフ) - 綾木 麗さん» コメントありがとうございます!実は鎌倉殿のお話を考え始めた頃からずーーーっと練ってた構成なので、褒めていただけて嬉しいです……。ハコヅメのお話も今日俺のお話も大好きで読ませていただいてます、お褒めいただき光栄でございます……。 (2022年12月12日 4時) (レス) id: 0f7e1e76f5 (このIDを非表示/違反報告)
綾木 麗(プロフ) - えー待って待って八千代生きてたの胸熱過ぎるんですけど……しかも息子役が菅生新樹さんって……花火さま神ですよね???前から存じておりましたけど (2022年12月12日 0時) (レス) @page25 id: 5a575a9999 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ