怪演女優 Thirty Eight (ページ30)

今日:3 hit、昨日:45 hit、合計:86,457 hit

・ページ30

・

J side

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

田中「ただいまぁ。」

『おかえりな……寒っ。』

田中「超寒かった……うわぁ、Aちゃんの家あったけぇ……。」

『身体冷えちゃったでしょ、いまお湯沸かしてるから待っててね。』

田中「助かる……ありがと。」

リビングに向かうとちょうどお湯が沸いたらしく、Aちゃんはとぽとぽと音を立ててティーバッグの入ったマグカップにお湯を注いでいた。

どこにでもある普通の光景なのに、そこにAちゃんがいるだけで特別な物に見えてしまうんだから、恋って恐ろしい。

……いや、これはもうむしろ愛なのか？なんて。

簡単に愛なんて言葉を持ち出したら失礼だな、と考えながら泊まりの時に持ってきている着替えが入ったバッグを寝室のいつもの定位置に置きに行く。

寝室に行くと、ベッドの上にクリーム色のもふもふが置かれてた。

彼女とはいえ一応人の物だから勝手に見るのは駄目かと思ったけれど、その正体が気になりすぎてしまってベッドの上に置いてあるそれを手に取る。

ボディはクリーム色で、目と首のリボンは俺のメンバーカラーの青。抱き抱えられるくらいの大きさのテディベア。

……前に泊まりに来た時、こいついたっけ。

そんな事を考えながら先日泊まりに来た事を思い出し、Aちゃんの前で口に出したら怒られそうな事まで思い出してにやけてしまっていると

『樹くん？』

寝室の扉を開けてひょこっと顔を覗かせてくるAちゃんがいた。

もうその描写だけで可愛いんだけど、目をぱちぱちさせてこちらを見ている狙ってないあざとさを出すAちゃんが本当に可愛くて。

にやけている顔が、余計ににやけてしまう。

『……あ、それ、』

田中「ん？……あ、そうそう、こいつさ、前俺が泊まり来た時いた？」

『ううん、その子ね、今日イギリスから届いたの。』

田中「イギリス！？」

『うん、私の叔母さんがイギリス人と結婚して、今はイギリスに住みながらぬいぐるみ職人してるんだけど、その叔母さんが作ったテディベア。』

田中「……ごめん、スケールが大きくてなんも頭入ってこなかった。」

『うん、私も小さい頃お父さんから直接聞いてびっくりした。でもこの子すっごい可愛いでしょ？今日からこの子ぎゅってして寝る事にしたの。』

……ちょっと待て、こいつを抱きしめて寝るだと？

聞き捨てならないぞ。