怪演女優 Thirty Eight (ページ24)

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田中「……辛いの気付けなくてごめん。」

『何も悪くないんだから謝らないでよ。』

田中「んーん、俺が気付いてあげてたら絶対に今とは違ったはずだし。」

『……違うって何が？』

田中「…………、とにかく、気付けなかった俺が悪いの。」

『……、樹くん悪くないのに。』

俺より遥かに大人なAちゃんが、胸の中で不安を口にして、それに耐えている自分を肯定してもらえるように俺が謝ったら少しだけ不貞腐れて。

まだAちゃんの顔は俺の胸に当てられていて、いつもの綺麗な顔は見れてないけれど、声だけで表情が分かってしまう気がする。

こんな事を口に出したらプレッシャーの種になってしまうかもしれないから絶対に言わないけど、波多野Aっていう女優は凄いんだなって。

この素敵な才能を持った女の子を持て囃したい周りの気持ちは凄く分かる。

分かるけど、この子も一人の普通の人間で。

世界で一番大好きな子の笑顔が消えていくのは耐えられない。

……それに、

本当は一生このままが良かったので少しだけ躊躇しながらもAちゃんからほんの少し身体を離し、胸の中にいるAちゃんをじっと見る。

『……何？』

田中「……俺が言うのもなんだけどさ、Aちゃんまた痩せたべ。」

『嘘。』

田中「まじ。最近さ、体重計乗ってる？」

『いや、乗ってない。』

田中「ちょっと乗ってきな？」

Aちゃんが俺の胸からすぐに離れていったのを見て、「あれ？離れたくなかったのって俺だけ？」なんて思ってしまう。

少し前は雑誌とかで恋愛観を話す時には「一人の時間が好きだから付き合ったからってあんまりベタベタされるのは嫌だ」て言ってたのにな。

なんでこんなに変わったかな。

そんな事を考えていると、Aちゃんが戻ってきたかと思えば、俺の顔を見るや否や驚きの表情で衝撃の言葉を口にした。

『……二キロも痩せてた。』

田中「はぁ！？前も細かったのに二キロも痩せたの！？」

『……痩せてた。』

田中「このままだと体重なくなっていつか消滅するよ！？」

『……まぁ、樹くんにだけは言われたくないんだけど。』

田中「てかちゃんと飯食ってんの？」

『うん、普通に食べてる。昨日もご飯もりもり食べた。』

田中「じゃあもう絶対にストレスが原因だって……。」

このままAちゃんがどんどん軽くなっていって、いつか自分の前から消えてしまうんじゃないかと思うだけで涙が出そうになる。