怪演女優 Thirty Eight (ページ36)

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『……え、ここはどうなるの？』

田中「ん？ここはさ、こうだからこうなるべ？だから……」

『あ、なるほどね……そういう事か……。』

田中「そゆこと。……大丈夫そう？」

『……うん、大丈夫だと思う。ありがとう。』

田中「ううん、なんかAちゃんに勉強教えてんの新鮮だわ。」

『運転の事に関してなんにも分からないから助かる……。』

冬ドラマの出演オファーを断っていると、ゆっくりと運転免許を取れるスケジュールが空く事に気付き、22歳にしてようやく準備を始めている。

机に向かって勉強をしているという状況が英語を習得した以来で頭に入るか不安だったけど、勉強癖は抜けていないみたいでちゃんと頭に入ってくる。

ようやく今日の目標ページ数まで達して、ぐっと上に伸びをすると、「んん」という声と共に関節が少しパキパキと音が鳴って少しびっくりする。

やっぱり10代の頃とは違って身体が固くなってるのかな、なんて考えていると、目の前にいる樹くんが頬杖をついてこちらを見てきた。

ポメラニアンを連想させるような潤んだ目でじーっと見てくるもんだから、「どうしたの？」と声をかけると、口角を上げてにいっと笑う。

田中「問題です。今日ってなんの日でしょうか。」

『ハロウィン？』

田中「正解。じゃあ次。ハロウィンの日にやる事といえばなーんだ？」

『……かぼちゃのランタン作る。』

田中「それと？」

『……子供たちが仮装して家に訪ねに来るから、「トリックオアトリート」って言われたらイタズラされないようにお菓子を渡す。』

田中「それと？……ねぇ、てかさ、答えわかってるっしょ？」

『……悪魔祓い。』

田中「え、そんなんするの？」

『家を訪ねてくる子供の中の一人に悪魔が取り憑いてるから、それを見極めて「出ていけ」って念じながら竹箒でその子の身体を叩くの。』

田中「え、本場のハロウィンってそんな暴力的な事すんの……？」

『うん、今のくだり全部デタラメなんだけど。』

田中「デタラメなの！？よくもまぁこんな短時間で思いついたね！？」

樹くんの言う通り、もう答えは分かっている。

だけどこれを自分から言ったらもう全てが終わるような気がして、とりあえずデタラメなストーリーを聞かせてみたけれど、もう限界らしい。

樹くんは頬杖をついたままニコッと笑い、地獄のような言葉を放った。

田中「……かそ」

『しない。』

田中「まだ最後まで言ってないじゃん。」