怪演女優 Thirty Eight (ページ3)

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たばこ ※ ページ3

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ちょい裏です。
裏から始まる作品ってどうなの？

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目を覚ますと、空は朝焼け色に染まっていた。

隣を見ると、おそらく上半身裸の状態で眠っている樹くん。

あー、あの後ずっと寝てたんだ。

記憶にある限り汚れていた身体の気持ち悪さが消えていることに気付き、自分の身体を見てみると昨日の事がまるで嘘だったように綺麗になっていた。

布団を剥がすと10月になったばかりの冷気が身体を直撃してくるもんだから、急いで昨日床に脱ぎ散らかした下着と薄手の洋服を身に付ける。

寝室から出て洗面所で歯を磨いて、リビングに向かう。

足音に気付かずソファーで丸くなっているニコちゃんを横目に、カバンの中に入れっぱなしだった甘いたばことジッポーを取り出した。

あの日泣きそうになりながら吸った、まだ何本も残っていた苦いたばこもカバンの中に入っていて、少しだけ躊躇しながらゴミ箱に捨てた。

色褪せない思い出を捨てた気分になった。

ニコちゃんがよく棚の上で眠っている本棚から今まで読んできた中で一番好きな恋愛小説を取り出し、そのまま空気が冷え込んできた外に出た。

外はやっぱり寒くて、かなり薄着の状態で出てきたのを少し後悔したけど、ここで戻った時の足音で多忙な樹くんを起こしてしまうのは申し訳ない。

そのままベランダに置いてある椅子に腰かけ、たばこに火を付けた後、もう何度も読んでページが開きかけている小説を読み返す事にした。

前回読んだ122ページに挟まっている栞を取り出して、ベランダに置いてあるテーブルに置いて、灰皿を重しにして風に飛ばされないよう工夫する。

甘くて少し苦いフレーバーが身体に巡っていくのを感じながらページをめくると、小説の中で一番好きなシーンがやってきた。

明日死んでしまう運命の女の子が別れ際に「また明日ね」と言い、そんな辛い運命を抱えた女の子が好きな男の子が苦笑いで「またね」と返す。

どう頑張っても変えられない運命が待ち望んでいるふたりの恋、展開が分かっているのになぜ泣きそうになってしまうんだろう。

気を紛らわす為に咥えているたばこを指で挟んで白い煙を吐き出すと、後ろからドアを開ける音が聞こえてきて、すぐにそちらを振り返った。

『……おはよう。』

田中「……はよ。」

『……起こしちゃった？』

田中「んーん、自然と目が覚めた。……てか寒、服着てくる。」