怪演女優 Thirty Eight (ページ13)

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こうして出来上がった二つのポッキ。

ポッキが出来上がってすぐにダイニングに行き、買ったはいいものの今まで使った事のなかった針を持ち、二人で向かい合わせになるように椅子に座る。

ドラマでは床でやるんだけど、ニコちゃんもいるし、清潔にしているとはいえ衛生的にも良くないので、普通にテーブルでやる事にした。

『……じゃあこれで勝った方が、』

田中「高級のアイスクリーム独り占め。」

『……時間は無制限でいいよね？』

田中「うん、先に型抜きできた方が勝ち。」

『よし……頑張るぞ。』

田中「ふぅ……よし、いきます。……よーい、スタート。」

樹くんの掛け声で始まった型抜きゲーム。

イカゲームとはかなり状況が違いすぎるし、当たり前だけど失敗しても殺されないので緊張感もそこまでないけれど、とりあえず裁縫針を持つ。

樹くんがハートで、私が丸。

形の難易度的にはハートと丸なので圧倒的に私の方が有利だと思うけれど、樹くんはかなり手先が器用なので油断はできない。

型に押し付けられてくぼんでいる部分を針でなぞっていくと、カリカリという音が鳴り、向かい側から聞こえてくる音と交ざって聴覚を刺激する。

その音に集中を切らさないように深呼吸しながら黙々と型抜きをしていると、向かい側から樹くんが話しかけてきた。

田中「Aちゃん、」

『ん？』

田中「……だいすきだよ。」

その瞬間、手が止まる。

「え、待って、急にだいすきって言われたんだけど、なんでこの流れで？え？どういう事……？」思わず目の前を見てしまうと樹くんは優しく微笑ん……

でない。めちゃくちゃにやにやしている。

私の集中が切れるのを分かって言ったような、そんな感じがする。

『……そういう事するの？』

田中「え、そういう事って？俺なんかした？」

『うわぁ、白々しい……。』

田中「へへ、まぁまぁ、落ち着きなさいよ。」

『ムカつく……。』

田中「ふはっ！Aちゃんの邪魔すんのおもろっ……。」

とりあえず思った通り樹くんは私の邪魔をしてきたらしく、樹くんのニヤニヤ顔に若干ムカつきながらも、このまま反撃しないのもかなり腹立つ。

うーん、と少し考えた結果、樹くんに話しかけた。

『樹くん、』

田中「なーに？」

『……さっき料理教えたくないって言ったでしょ？』

田中「……うん、言ってたね。」

『……それね、樹くんにご飯いっぱい作ってあげたかったからなの。』

ばき、