怪演女優 Thirty Six (ページ37)

今日:49 hit、昨日:1 hit、合計:75,833 hit

・ページ37

・

私の事を視線で捉えたて嬉しそうな顔をする樹くんがお母さんを見てる子供のように見えて、なんだか可愛い。

一瞬そのままにしておこうと思ったけれど、その思いを断ち切るようにもう一度声をかけた。

『ここで寝たら身体痛くなるよ？』

田中「んー……でも、ぉ、俺……、ここ寝たい……。」

『うーん、でも明日も舞台でしょ？だからお願い、私のベッド使っていいからそこで寝てくれないかな。』

田中「んぇ……？Aちゃんも一緒寝るの……？」

『私は、』

どうしよう。

雑誌の撮影でつい隣で眠ってしまって、起きたら顔が近くにある……みたいな事があったけど、あくまでも今はプライベート。

隣に寝るのはさすがにまずいんじゃないか。

そう思って答えを捻り出そうと考えていると、私の手を優しく握りながら、ムスッとしている樹くんが話しかけてきた。

田中「ねぇー……俺、一緒……がいい……。ベッド行こ、？」

テーブルの上に置いてあるワインの度数がかなり高くて酔っているからなのか？それとも寝起きだからなのか？

こんなにふわふわしてて甘い、わたあめみたいな喋り方の樹くんを見た事がないのできっと後者なんだろう。

「あー、俺？タクシーで帰るよ。」って言ってたはずの樹くんがこうなっているだなんて誰が分かるだろうか。

でも、まぁ、とりあえず、

『うん、じゃあベッド行こっか、立てる？』

田中「立てる……。……手ぇ繋いでいこ、ぉ？」

その発言にも少しだけ悩んだけど、これでフラフラとどこかに行って頭を打ったりでもしたら……と考えると不安だ。

普段の樹くんだとそんな事ありえないんだけど、今のふわふわきゅるるん系の樹くんは行動までふわふわきゅるるんだ。

樹くんがどこかにふらっと行かないように手を繋いで、私がいつも眠っている寝室まで連れていく。

連れていく間も嬉しそう……というか楽しそうに鼻歌を歌っていたので、それを聞きながら連れていくことになった。

何の曲かまでは分からなかったけど。

『はい、着いたよ……。』

田中「んへ、こぇ、Aちゃんのベッド、？」

『そう。はい、寝て？ごろんして？』

田中「へへ、ごろーん……ふふふ、ふかふか……。」

いつも男らしい樹くんをお酒の力でここまで変えてしまったのか、とお酒の怖さを思い知っていると、

『わっ、！？』

樹くんが寝転がっても尚、離してくれなかった手をぐいっと引かれて、気付けば樹くんの目の前に顔があるような状況だった。