怪演女優 Thirty Six (ページ36)

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WINE ページ36

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ふと、腕が痺れる感覚で目を覚ます。

腕が痺れているという時点でベッドで寝ていなかったというのは明らかだったけど、何故か眠る直前の記憶がない。

目の前のテーブルに広がる嘘みたいな光景と、今までほぼなる事はなかった特有の頭痛で直前の行動を思い出す。

あ、そうだ、貰い物のワイン飲んでたんだ。

成人したにも関わらずお酒が嫌いだった二年前とは違い、今ではちょこちょこという感じで飲めるようになっている。

【ないぷり】のスタッフさんがクランクアップのお祝いで高そうな赤ワインをくれたから、それを飲んでたんだ。

テレビを付けっぱなしにしたまま眠ってしまったらしく、その音で頭がガンガンと響いてしまって仕方がない。

テレビの音を消そうとソファーの前に設置しているローテーブルに置いてあるリモコンを手に取ろうと歩き出す。

すると、

『えっ、』

ソファーで丸くなって寝ている樹くんがいた。

あれ、なんで、どうして樹くんがここにいるんだっけ？

何故かいる樹くんに若干恐怖を覚えながら、お酒を飲んで眠る少し前の事を思い出そうと考える。

たしか……

私がワインを普段飲まないからという理由で樹くんと一緒に飲もうって話になって、しばらくして樹くんが家に来てそのまま、

……招き入れたな。

それでお酒を一緒に飲んでいろんな話をしていたら、私が先に眠ってしまったから帰ろうにも帰れなかったんだろう。

自分で招き入れたにも関わらず恐怖を覚えてしまった樹くんに心の中で謝りながら、眠ってる樹くんを揺さぶった。

二人がけの狭いソファーでそんな丸くなって寝ていたら、明日も舞台があるのに身体が痛くなってしまう。

『樹くん、樹くん起きて、』

田中「…………ん、？」

『そこで寝てたら身体痛くなっちゃうよ。』

田中「…………Aちゃん、？」

『うん、そう。ほら早く起きて……。』

樹くんは起きるのが苦手だというのは知っていたし、撮影のために起こす時も大体寝ぼけてこうなるのも知っている。

それでも諦めずに樹くんの身体を優しく叩いて起こそうとすると、腕が伸びてきてそれを止められる。

寝起きとは思えない素早すぎる行動に驚いて樹くんの顔を見ると、明らかに寝起きの虚ろな目で見つめられる。

ぼやっとしてるけど熱い視線に耐えきれずに目を逸らすと、樹くんはふにゃっと優しく微笑んだ。

田中「……Aちゃんだ、ぁ、」

『……うん、』

田中「うぁ、Aちゃんいた……、へへっ、」