怪演女優 Thirty Six (ページ15)

今日:55 hit、昨日:1 hit、合計:75,839 hit

・ページ15

・

田中「は……？」

岩本「18歳になる日、僕は正式に彼女と婚約するんです。これは彼女が許嫁になった時から決まっていた事です。」

田中「……そんなの、宮園は望んでねぇだろ。」

岩本「望んでようが望んでなかろうがルールはルールです。決まった事は決まった事、それを成し遂げられずに立派な大人になれるとお思いですか？それに、あなたがとんだ馬鹿じゃないなら分かるでしょう。」

田中「……何をだよ、」

岩本「いつ崩れるか分からない砂の城と、なんの影響も受けずに平和に暮らせる一軒家。……どっちといた方が幸せになれるのか。将来、彼女が後悔しない人生を送れるのか。」

田中「……そんなの、本人が決める事じゃ」

岩本「俺はお前に聞いてるんだよ、……伴野尉。」

田中「……………。」

岩本「僕といたら、好きな事もなんでもやり放題だ。華道さえこなしていけば楽して生きていける。

そんな事、彼女にとってはさほど苦痛じゃない。……装飾を見れば分かるだろ、彼女は天才なんだ。彼女は絶対、幸せになれる。

でも君といたらどうだ。大好きな華道も辞め、新しく好きな事を見つけようったってそんな事もろくにできない。君と暮らす為に自分の人生を棒に振るんだ。

そして将来こう思う、「あぁ、あの時、正直に生きたからこうなったんだ。」ってね。

……彼女はきっと……いや、絶対に不幸になる。」

田中「…………………………。」

岩本「……星蘭の為にどうしたらいいのか、分かるよな。」

田中「……星蘭の、為、」

岩本「好きな女の幸せも願えずに何が男だ。好きな女の将来の安泰を願えず、自分の元に引き止めておく……そんなの、彼女も自分も惨めになるだけだろ。」

田中「………………。」

岩本「……せいぜいよく考えるんだな、星蘭の為になるのはどっちの道なのか。」

田中「……………………………………。」

・

田中「…………………、くそ、」

・

『……………………………。』

岩本「おかえり。」

『……ただいま帰りました、』

岩本「……ねぇ、明後日の誕生日……なにがほしい？」

『えっ……、なんだろう、気持ちだけで嬉しいですよ。』

岩本「……じゃあ、結納式が終わったら一緒に指輪でも買いに行こうか。それが誕生日プレゼント。」

『……………………、ゆび、わ、？』

岩本「明後日、誕生日と同じ日に結納式があるんだよ？そこで正式に結婚が決まるんだ、婚約指輪は買わなきゃでしょう？」