第四話 ページ9
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柄本「…じゃあ、行ってくるね。」
『ん、りょうかーい。』
柄本「あ、…今日の夕飯、あのお弁当でいいかな。」
『うん、なんでもいいよ。』
柄本「分かった。…行ってきます。」
『……行ってらっしゃーい。』
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井浦「…………。」
柄本「…あなたが黙ってるなんて珍しいですね。」
井浦「伊吹梢の家がおかしいって、伊吹家の近所のおば様が噂しててよ、どういう事なんだろう…ってな。」
柄本「……どうおかしいんですかね。」
井浦「ほら、こないだ話しただろ。従兄弟の…伊吹全だったかな。一緒に暮らしてんだよ、…普通有り得ねえだろ、従兄弟と一緒に暮らしてるなんてよ。」
柄本「…従兄弟、ねぇ。」
井浦「それだけじゃねぇぞ?
伊吹梢、全の親は三人兄弟で全員男。長男の娘二人、次男の娘が一人と息子が一人。三男の娘も一人。
次男の息子が全、三男の娘が梢だ。それに加えて三人の嫁も一緒に暮らしてる。合計…何人だ?あー…十人か。」
柄本「…八人でしょ、」
井浦「いやいや、それが違ぇんだよ。今言った八人+伊吹梢の両親がいるからよ。それで、合計十人。」
柄本「…長男と次男は?」
井浦「海外に出張中。ほら、伊吹こ…あーもう、フルネーム面倒くせぇな。梢の爺ちゃんが資産家だろ?
そんで会社も経営してたんだけど、その海外支店を任されてんのが、長男と次男なんだよ。だから今…上海の支店だったか?…とりあえず海外行ってんだよ。」
柄本「…三男だけが日本に……。」
井浦「俺らには到底分からねぇよな、あっち側の人間の生活は。」
柄本「………あっち側か。」
井浦「…お前もよ、奥さんの事引きずってねえで、新しい女見つけて結婚しちまえよ。養育費とか大変だろうけど。」
柄本「……………お気遣いどうも。」
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夏帆「いらっしゃいませー…………なんですか?」
柄本「………メンチカツ弁当、二つ。」
夏帆「…1020円です。」
柄本「……………どう?元気かな、凛は。」
夏帆「………元気です。」
柄本「……まだ、会わせてはくれないか。」
夏帆「………ごめんなさい。」
柄本「……光、…もう怒ってない、あの事。だから、」
夏帆「…再婚は、出来ません。」
柄本「……………。」
夏帆「………また貴方を裏切るのが怖いの。」
柄本「………そっか。」
「…………パパ?」
柄本「…凛?」
夏帆「……………………………。」
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