怪演女優 XIX (ページ27)

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本心ページ27

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浅香「…Aちゃん、」

『……あれ、？』

浅香「ごめんね、帰るの遅くなって。」

『……今の今まで、飲んできてたの？もう朝だけど、』

浅香「うん……ほんと、ごめん。用意してくれてたのに。」

真っ白なテーブルクロスの上にある花瓶に入っているかすみ草は、もうとっくに元気を失ってしまっている。

時計を見ると朝の七時半。誕生日は過ぎていた。

浅香「……あの、」

『ん？』

浅香「料理、今からでも食べられる、かな……？」

『……冷蔵庫入れるの忘れて寝ちゃってたっぽいし、いま夏だし、辞めた方がいいよ。お腹壊しちゃうから。』

昨日の夜、頑張って作った料理を生ゴミ専用のゴミ箱に捨てる。チキンに、サラダに、……ザッハトルテ。

元気が無いかすみ草もゴミ箱に捨てると、何故だか涙が溢れてきそうになってしまって、唇を噛んだ。

浅香「……あの、Aちゃん、」

『スープだけは加熱すれば飲めるから、』

浅香「……ありがとう、」

『……ワイン飲もっか。』

浅香「えっ？」

二人分のワイングラスを持ってきて、赤ワインを注ぐ。

朝からこうやってお酒を飲むなんて初めての経験で、少しの罪悪感と高揚感で頭と胸がいっぱいになる。

ワインをぐいっと飲むと、昨日のようにアルコールが体を巡っていくのを感じるけど、気分は良くない。

それは寝起きだからなのか、単純にお酒に慣れていないだけなのか、それは分からないし、考えたくもない。

『……航大くんは、』

浅香「……ん？」

『私の事好き？』

浅香「……うん、好きだよ。」

『私と、将来どうなりたいと思ってる？』

浅香「……いつかは、結婚したいと思ってる。」

やっぱり、そうだよね。

お母さんがこっちにいきなり来る事になって、なんだか気付いたら私が挨拶する流れになってたもんね。

そんな航大くんの目をしっかりと見れず、ワインを飲む…けど、気付いたらもうワイングラスは空になっていた。

新しくワインを注いでいる時に、航大くんに聞かれた。

浅香「…Aちゃんは結婚、したいと思ってる？」

『……思ってない。』

浅香「……え？」

『……航大くんとの、将来が見えてない。』

まさか、そんな事言われるなんて思っていなかったのか、航大くんの綺麗な目は驚きを隠せない事を物語っていた。

でも、ごめんね航大くん。

誕生日のサプライズでも、嘘でもなく、本心なんだ。

もう、気持ちに嘘はつけないや。

『……別れよ、私達。』