怪演女優 XVI (ページ29)

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第七話ページ29

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『育児放棄？』

椎名「産婦人科医の知識もあるお前の考えを聞きたい。」

『…黒岩先生が育児放棄してるんですか？』

椎名「まさか。…ちょっと気になっただけだよ。」

『…育児放棄と大きく括って言っても様々な形があります。どの形を指しているかによって話は変わりますが…。』

椎名「じゃ、じゃあ、あの…全体的な話をしてくれ。」

『…育児放棄…つまりネグレクトをする親…まぁ結構分かりやすく説明しますけど、聞いてて辛くなったら言ってください。』

椎名「…あぁ。」

『ネグレクトの多くのケースは、いくつかの問題が掛け合わさって起こります。大きくその問題を三つに分けると…親の要因、子の要因、そして家庭を取り巻く環境の要因です。』

椎名「……うん。」

『その三つが掛け合わさった時に問題は起きます。まぁ、ぶっちゃけ親とか子供とか環境とかにどんな問題があろうと、そんな事しちゃ駄目なんですけどね。』

椎名「…その、自分の子供に対してネグレクトをしている親が、育児放棄されていた場合…みたいなのもあるのか？」

『はい。親になると自然と親の見本は自分の親になりますから。親から愛情を受けてこなかった場合、その親はどうやって子供を育てていいかわからなくなります。それで自分の子供にも…という負の連鎖が起きる事もありますね。』

椎名「…お前はどうなんだ？」

『私はされてませんよ？普通にご飯も出てきて、母も家にいましたし…父もちゃんと働く人でしたから。…ただ、』

椎名「ただ？」

『育児放棄の被害者に会った事はあります。頬に痣のある子供が研修先の産婦人科病院の外にある階段に一人で座ってました。多分逃げてきたんでしょうね、誰もいない家から。』

椎名「……………。」

『その子は児童養護施設に預けられ、直に母親とその交際相手の男も捕まりました。…あと聞きたいことは。』

椎名「…それを受けた時の、解決策はあるのか。」

『そうですね…強いて言うなら、被害を受けた子に、周りの大人がたくさんの愛情を注いであげる事です。』

椎名「愛情、ねぇ……。」

『愛情に触れる事は人生においても大事な事ですから。…ただの平凡に暮らしてきた女の浅はかな戯言ですけど。』

椎名「………ありがとう。スッキリした。」

『え？』

椎名「じゃ、俺は仕事戻るわ……。」

『……黒岩先生に、お礼を言われた…。明日誰か死ぬぞ…。』