episode 61 ページ17
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結局、遼ちゃんはずっと私に付きまとってきた。
講義中も、お昼もずっと。
帰り道まで付きまとわれているので、私は遂に言った。
『……警察呼ぶって言ったよね?』
佐伯「うん、言われた。」
『私は遼ちゃんとよりを戻す気はないし、どんな理由があろうとやり直すなんて事は絶対にないから。』
佐伯「でも俺好きなんだもん、Aの事。」
『私は好きじゃない。』
本当に警察を呼んでやろうかと思ったけれど、正直、元カレを警察に突き出しても良い気はしない。
仮にも前は好意を持っていた男性だからか、情が湧いてしまっている私も中々甘いのだろうか。
佐伯「あ、わかった。」
『…なに。』
佐伯「彼氏いないけど、好きな人いるんでしょ。」
『……いないから。』
神田「今の間、めっちゃ怪しいじゃん。」
『本当にいない、から……』
そんな言い合いをしながら歩いていると、見覚えしかない黒い車の方に歩いていく神谷さんを見つけた。
この状況を打破したくて、「神谷さん!」と叫ぶと、神谷さんはこちらに気付き、私に会釈をする。
佐伯「誰?あれ。」
『…待ち合わせしてる人だから。』
私はそんなすぐにバレそうな嘘をつき、神谷さんに駆け寄ると、さすがに遼ちゃんは着いてこれなかった。
神谷「お疲れ様です、どうしました?」
『……ちょっとだけ、協力していただけませんか。』
神谷「………はい?」
数分後
『遼ちゃん。』
佐伯「…なに?男の人なんて連れて来ちゃって。」
『…私の彼氏。』
佐伯「……へぇー!」
神谷「…すみだ署の神谷です。」
佐伯「あ、どうもー、Aの元カレですー。」
『……神谷さん、刑事さんだから。』
佐伯「え、まじ?なんかあったら逮捕的な?」
『……もう付きまとわないで。』
こんなに堂々と嘘をついたのは、何年ぶりだろう。
神谷さんにもご協力いただいて嘘をつくと、なんだか一周まわって嘘をつくのが楽しくなってしまっている。
遼ちゃんは神谷さんの顔と私の顔を見比べ、不気味なほどニコニコとした笑顔で「はーい。」と言ってきた。
『…じゃあ。』
佐伯「じゃあねー。」
こうして、平和な日々が戻ってくるだろう。
私は遼ちゃんに背を向け神谷さんと一緒に歩き始めた。
『………何か食べたいもの、ありますか?』
神谷「…とりあえず車乗りましょうか。」
『……ありがとうございます。』
神谷「……いえ。」
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花火2016(プロフ) - 明里香さん» 本当によく見てらっしゃる…ありがとうございます。 (2019年9月11日 0時) (レス) id: cdf4b9c055 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 82話にも同じ誤字がありました。「児島」ではなく、「児嶋」です。複数箇所あります。 (2019年9月11日 0時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 前に戻りますが、58話に誤字がありました。「児島さん」ではなく、「児嶋さん」です。 (2019年9月10日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 88話に誤字がありました。「聡一くん」ではなく、「総一くん」です。 (2019年9月10日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
あめり(プロフ) - 毎日密かに楽しみにしています...!()応援しています! (2019年9月5日 11時) (レス) id: 99ae7f7f0a (このIDを非表示/違反報告)
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