喧嘩ができないスケバンちゃん。６！【今日から俺は！】

第５話！ ページ8

『ただい』

お父さん「第6章おめでとうー！」

メタ発言、とはこの事だ。

お父さんはパーティー帽を被り、クラッカーを鳴らして私を迎えに来てくれた。

『メタ発言だよ、お父さん。』

お父さん「良いじゃないか！第6章、めでたいかー！」

『...いぇーい。』

お父さん「元気が足りなーい！」

お父さんは少し、いや、結構な馬鹿。

というか天然だ。

自分の愛した妻に裏切られても「好きな人が出来たんだな！」とニコニコしていれる。

ドラマなどでは【真の悪役】的なポジションで後半にキャラ変してくる感じだ。

だが、うちのお父さんは本来もこんな感じなのだ。


お父さん「あれ、相良くんいないのか。」

『いないよ。』

お父さん「えぇー。呼んでくればいいのに。」

『毎回毎回残念がらないでくれる？猛くん毎回呼べる訳ないでしょ。』

そしてこの人は特殊である。

娘に恋人ができたと知れば怒ったり反対するのが普通のお父さんだ。

しかもツッパリ、千葉で最も最凶の高校のNo.2と知れば猛反対するだろう。

だけど家に連れ帰った時、お父さんは。

お父さん「そうかそうか！Aにも遂に春が来たんだなぁー！良かったなー！」

と大笑いしていたので、本当に脳みそお花畑とはこの事だな、と思った。

猛くんも珍しく苦笑いだった。

あとから聞いた話だと「思ってたのと違う。」らしい。


まぁ、こんなお父さんだから私はお父さんイヤイヤ期がなかったんだろう。

ある意味幸せな家庭だな、と思った。



お父さん「A。」

私がご飯を食べる椅子に座ると、お父さんは真面目な顔をして名前を呼んだ。

『なに？珍しいね、真面目な顔して。』

お父さん「悪いな。お父さん、出張が多くて寂しい思いさせてな。」

お父さんは商社で働いている、いわゆる商社マン、というヤツなので出張が多い。

小さい頃は確かに寂しかった。

だけど、今は自由に動けるから逆にありがたいのだが。

『どうしたの？急にそんな事。』

お父さん「いや、Aはどんな気持ちなのかな、って気になってな。」

こんな感じでも、私のお父さんだから、少し悔しい気持ちになってしまう。

『...仕方ないよ、仕事だし。それでギャンブルしてます、とかだったら怒るけど。』

お父さん「そんな事したらAにぶっ飛ばされちゃうからな。」

『ごめんね、喧嘩できないの。』

そう言うと、お父さんは楽しそうに笑ってブラックの珈琲を飲んだ。

その瞬間吹き出した事は見なかった事にしよう。

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