怪演女優 Forty Four

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小栗「……っ、九郎殿、……八千代も、」

『………。』

菅田「……捕まえたければ捕まえるが良い。……逃げるのにも飽きた。」

坂東「……九郎義経は、九州へ逃げ落ちたと聞いておる。……かような所にいるはずがない。……偽物であろう！！」

菅田「……っ、」

『……北条殿、』



菅田「……兄上との事、今からなんとかならぬか。」

小栗「……法皇様が、九郎殿追討の宣旨を出されました。」

『……っ、小四郎……、それは、誠か……？』

小栗「……あぁ。」

『……、そう、か、』

菅田「……祈るような思いでここへ来てみたが、無駄だったか。」

小栗「……申し訳ありません。」

菅田「……平家を滅ぼしたのは、ついこないだではないか。」

小栗「………。」

菅田「……私の、何がいけなかった、？」

『…………。』

小栗「……、九郎殿は、人をお信じになりすぎるのです。」

坂東「……策に長けた者は、かえって騙されやすいものだ。」

菅田「………。」

小栗「……この後は、どうされるおつもりですか？」

菅田「さあ……、……奥州にでも帰ろうか。」

『……っ、』

小栗「お辞めなさい。……九郎殿が奥州に入れば、必ず、そこに戦の火種が生まれます。……戦はもう、終わりにしましょう。」

菅田「戦のない世で、……私のような人間はどう生きていけば良いのだ。」

小栗「……あれだけ平家を振り回したお方です。……あれだけの知恵があれば、どこでも生きていけます。……それにあなたには、まだ八千代が居る。」

『………っ、』

小栗「あなたの隣にいるのは、……源氏が誇る、頭脳の持ち主です。」

菅田「……、御台所に伝えてくれ。」

小栗「………。」

菅田「……九郎は、御台所の膝のあたたかさを、生涯忘れないと。」

小栗「……必ず。」

菅田「………行くぞ、」

『……はっ。』

坂東「あなたは仰った。「経験もないのに自身もなければ何もできぬ」と。……では、自信を付けるためには何がいるか。」

菅田「……。」


坂東「……経験でござるよ。」


菅田「…………。」

坂東「まだまだ、これからじゃ。」


菅田「……さらばだ。」


『………。』

小栗「八千代、」

『彼にとっての一番は、私じゃなくていい。』

小栗「……っ、」


『……ただ、彼が最期を迎える時……年老いた彼の目に映るのが、彼の年齢を感じさせる手を握れるのが、……私でありたい。……それだけだ。』


小栗「……、九郎殿を頼んだぞ。」

『……、じゃあな。』

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