怪演女優 Forty Four

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Shintaro side

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樹に彼女がいるって知った時、正直、「大丈夫かな」って思った。


あの時はたしかにめちゃくちゃ落ち込んでたから、どうやって元気づけようか悩んだ挙句にあんなライトな返し方をしたし、それは後悔していない。

だけど、その夜にベッドで「あぁ、彼女いるんだ」「SixTONES以外に大事な存在がいるんだ」って、なんかメンヘラ彼女みたいな事思っちゃって。

俺達だってアイドルだけど人間だし、一人の男だし、彼女ができるのは構わないけど、それを内緒にされていた事がちょっとだけショックで。

「あれ、俺らってメンバー以前に……友達だよな？」って思っちゃったり。

ほんと、つくづく俺は面倒くさい事を考えてしまって、自分が嫌になる。

そんな面倒くさい考えを募らせ、頭の中で巡らせている中で、唯一これに関する安心ポイントは、その相手がAちゃんだっていう事。

俺はドラマの撮影で共演しているから、Aちゃんが凄くいい子だって事も知ってるし、メンバーもAちゃんが大好きなのを知ってる。

それでも尚、不安は消えなかった。

Aちゃんは、俺らじゃ到底つり合わないくらい人として素敵な子で、ぶっちゃけ「なんで樹が！？」って思ってしまうくらい、とても魅力的。

だからこそ、樹がAちゃんと付き合った事がきっかけで、メンバー間で起きなくていい問題が生じてしまうのではないかと思うと、胸が苦しい。


Aちゃんの事が友達として大好きだからこそ、嫌いになりたくない。


メンバーは全員Aちゃんに会った事があるし、素敵な子だって分かるからこそ、全員、交際している事に関してイエスもノーも出せなかった。

樹の交際は怒る事じゃないし、嘆く事でもない。だけど、……一応俺らはアイドルで、これがバレたら、友達の樹の評価がガクンと下がってしまうから。

本当に申し訳ないけれど、そこは友達として……仲間として、言えなかった。

樹が運転する車の中では沈黙が流れる。

あの事がきっかけで仲が悪くなった訳でもないし、もう樹の事が嫌いになったなんて有り得ない、……けど、何を話せばいいのかが分からない。

ほら、あのジェシーだって黙ってる。

面倒くさい考えを捨てた俺は、Aちゃんにどんな顔して会えばいいんだろう、何を聞けばいいんだろうと、違う悩みで頭をいっぱいにしていた。

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