香り。２

episode 51 ページ7

お姉ちゃんの遺体が日本に帰ってきた。

ミコトさん達が再解剖をするらしい。

私もその場に呼ばれたが、お姉ちゃんの遺体は見たくなかった。

見たら泣き出してしまいそうだったから。

中堂さんは、私の手をずっと握っていた。

安心させるように、優しく握っていてくれた。


お姉ちゃんの、再解剖が始まった。

私は勿論その場には立ち会えないので、ソファーでずっと願っていた。

犯人に繋がるヒントがありますように。

そして絶対に犯人が捕まりますように。と。


8年前

「夕希子！！」

「夕希子ちゃん！」

部屋に響く、大嫌いな親族の声。

その声に包まれて、眠っているように動かないお姉ちゃんの亡骸。

私はショックのあまり声も出なかった。

驚いた事に、涙も出ない。

「あんた、こんな状況で泣かないんだ。」

近くにいた人が、私を見て呆れたように言う。

「この子、あれだから。」

「あぁ、誰にも愛されず産まれた残念な子。」

辛かった。

私はただ、産まれてきただけなのに。

「この子なんじゃないの？」

女が私を見て言った。


「夕希子を殺した犯人。」


こればかりは、流石に許せなかった。

私は手でその女の首を掴む。

『…いい加減にして。』

親族は怯えたように私を見る。

私はその手にだんだんと力を入れていった。

足音が聞こえてきて、私は急いでその手を離す。

警察「犯人の疑いで逮捕された男がいます。」

「誰なの？その犯人は。」

警察「その男は、法医解剖医の…」

気が動転していて、周りの声が聞こえなかった。

聞こえたのは、犯人の名前だと思われる


「けい」と言う言葉だった。



三澄「Aちゃん？おーい。」

『…は、はい。』

三澄「ボーッとしてたよ、大丈夫？」

『ごめんなさい、大丈夫です。』

過去の事を思い出していた。

お姉ちゃんの解剖は終わったらしい。

『それで、手懸かりは…？』

ミコトさんは私の目を見て、ニコッと笑う。

あったんだ……

三澄「明日の裁判、絶対に勝つから。」

『宜しくお願いします…！』

全ては明日。明日で事件の決着が付く。

…明日に懸けるしかないんだ。

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