46話【獪岳との出会い】 参 ページ46
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「アイスって、どういう…」
『えっ? お腹空いてたんじゃないの?』
珍しく同様の色を見せた獪岳に、きょとん顔をお見舞いすれば彼は数秒の無言からため息をついた。
それから、地面に腰を下ろし手を私に伸ばした。
初めて受け入れてくれた。
嬉しくなった私は彼の隣に座って、アイスを二つに割って一つを彼に手渡す。
パキッ、と良い音が空に響いた。チュー、と吸えば冷たいそれは熱くなった身体に溶ける。
『おいしー!』
「……」
私が美味しい!美味しい!と食べている間、彼は黙々とそのアイスを食べていた。
私のことをうるさいと思っていたかもしれないし、何か悩み事を考えていたのかもしれない。
あと半分、のとこでやっと口を開いた彼。
「……何を、されても。何を貰って、ご飯を食っても満たされてねぇんだ」
『…? それどーゆう』
口を挟もうとした私の口を手で塞いだ彼はどこか、遠い方を見つめていた。
「黙って聞いてろガキ。
…あのカスが来てから、そのイライラはもっと増した。なんであの人はあのカスを認めるんだ。なんで努力もしてねぇ奴が俺と同じ土俵に立てるんだ。可笑しいだろ、俺の努力は、なんだったんだよ」
初めて聞いた獪岳の本音。
馬鹿で無知な私でも、その本音は重く軽々しく口を挟めるものではなかった。
思えば、彼は元々真面目な努力家なのだ。
小さい頃からの苛つきで心の根元に慢心さや独善さが住み着いただけで、元は真面目な男の子なのだ。
幼いながらにそれを察した私は、またチュー、とアイスを吸った。
『ほおーん、でもそれってただかいがく君が思ってるだけなんでしょ? おじーちゃん、かいがく君の事ちゃんと好きだと思うけど』
「その愛情はカスにも向けられる。俺一人じゃねえ」
私の思ったことを言ってもばさりと瞬殺されてしまう。
彼は、感情というものに関してとてつもない程の執着を持っている。
『なんか、結構めんどくさいんだね、かいがく君って』
「嗚呼、そうだよ俺は面倒くさいんだ。
どうせ、お前も俺から離れる。時間の問題だ」
その言葉がどうにも可笑しくて、あっははと笑ってしまった。
突然笑った私に驚いた彼は、私の目を見る。
『そんな、自分で決めつけちゃーどーしようもないじゃん』
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アオ猫又(プロフ) - 獪岳が好きなんでこの作品がめっちゃ好きです!ありがとう、作者様…。 (2022年1月1日 21時) (レス) @page33 id: 6f2bf6bdd1 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅(プロフ) - いつも楽しみにして見させてもらってます!失礼ですが、42話のしのぶさんの台詞の「あっ、そろそろ〇〇さんの番ですね。....」の番が版になっていました。詳しく書けたか分かりませんが、大丈夫でしたでしょうか?あと、更新頑張ってください!応援してます! (2020年11月22日 21時) (レス) id: 1ef7d533ea (このIDを非表示/違反報告)
るる - 予告とかの文才がありすぎてヤバいです(←文才力0の人) 更新頑張ってください! (2020年4月17日 12時) (レス) id: 9d2e256c74 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の中の棒人間(プロフ) - みっくす14。さん» コメントありがとうございます。誤字指摘有り難いです......!おこがましいかもしれませんが詳しいページを教えてくださると助かります!(無能で申し訳ないです)。 (2020年1月4日 22時) (レス) id: 46f50694f0 (このIDを非表示/違反報告)
みっくす14。 - いつも見させてもらってます!!でもちょーっと直してもらいたいところがあるんですよね。沢山誤字っております。(..)出会いの方ですかね? (2020年1月4日 1時) (レス) id: ebaa9545e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐の中の棒人間 | 作成日時:2019年12月26日 22時